ニュースレター 第52号 (2008年6月発行)
廃プラ(その他プラ)処理に関わる諸問題――〈前〉

廃棄物系化学物質による健康被害者支援科学者グループ 小椋 和子

目 次
〈前編〉
 はじめに
 1.ゴミ焼却の問題点
 2.容器包装リサイクル法の問題点
 3.一般廃棄物の「その他プラ」のリサイクルの仕組みと問題点
 4.あるリサイクル業者、ケミカルリサイクルの現場
 5.廃プラ施設周辺の健康被害
 6.健康被害が無視される理由
〈後編〉(次号)
 7.各自治体の廃プラリサイクル新事情
 8.プラスチックリサイクルの現状
 9.プラスチックの処理はどうあるべきか
 10.国民の健康を守る法律はあるか
 11.有害物質から身を守る方法(終わりにかえて)

はじめに
 容器包装リサイクル法が改正されてからまだ間がないにもかかわらず、このところ東京23区ではにわかに廃プラ問題が浮上してきた。そのきっかけは東京23区清掃一部事務組合(以下一組と省略)が平成20年からの廃プラ全面焼却を打ち出した事による。
 同組合は東京都清掃局が平成12年度に解体され、清掃事業が区に移管されることにより、暫定的に設置されたのである。しかし、区への移管はあくまでも方向性であって実行するのは不可能であることは当初から目に見えていた。なぜならば、移管されるとすべての区が焼却炉を持ち、焼却事業を行う必要がある。案の定、焼却炉の建設地が見つからない区があること、23区内には一般ゴミ量にみあう十分な焼却炉がすでにあること、さらに資源ごみの回収により、焼却ごみ量(紙ごみと厨芥ゴミ)は減少し続けていることにより、燃やすごみがなくなるおそれが出てきたことなどでゴミ行政の区の独立はなしくずしとなったのである。
 その結果、事実上の広域清掃事業連合組合として一組は現在も存続しているのである。一組は23区の区長会が運営することになっているのであるが、実際には旧清掃局が実権を握っており、区長会は傀儡政権に過ぎない。23区のごみ政策は現在、一般ゴミの収集は区が担当、焼却は一組、埋め立ては東京都環境局という3層構造となっている。
 プラスチックはもともと一般廃棄物であり、全国では焼却を基本とする自治体および埋め立てをする自治体が半数ずつあった。平成7年に環境省と経済産業省は容器包装リサイクル法を成立させた(平成18年に改正)。この中に容器包装リサイクルの対象となるプラスチックの「その他プラ」が位置づけられている。
 これまで23区では不燃ごみとしてプラスチックをカンやビンなどと共に収集し、資源のカンおよびビンを除去した後、埋め立てていたのであるが、埋め立て地の不足を理由に平成20年から全面的に廃プラの焼却が打ち出されたのである。東京都の廃棄物審議委員会が平成16年に環境省に先立って廃プラの焼却を決定したことから始まったとされている。23区の平成20年からの廃プラ全面焼却は以上の経過により開始されたのである。しかし、埋め立て地の逼迫というよりも焼却炉に見合うゴミ量が減少したことが最大の理由と区民は考えている。
 全面焼却に対して各区では国が定めた容器包装リサイクルを進めるべきとする区民におされてリサイクルを行う区が出てきた。したがって分別方法が各区により異なり、ちょっとした騒動となっている。
 筆者は杉並病を調査した経験からプラスチックのリサイクルには健康被害をもたらす危険性があることを多くの人に知っていただきたく、この文章を書くことにした。
1.ゴミ焼却の問題点
 有機ゴミは焼却すれば、二酸化炭素や水となり、素材の有害物質を含む化学物質が広く薄く地球に散らばることになる。人間にとっては目の前から固形のゴミが消え、幸せであり、さらに企業は大量生産が可能となる。この図式はダイオキシンをはじめとする有害物質の排出を抑制するために焼却炉が高性能化したことによってますます勢いづいている。高性能とはいえ、有害物質を完全に除去して排気することは不可能であり、フィルターの劣化などで思わぬ被害が出ないとも限らない。
 最悪なのは日本には焼却炉からの有害物質の排気基準は無いに等しい。ダイオキシン類対策特別措置法によるダイオキシンは多くの人が知るように測定が1年に一度4時間、安定した時に測定すればよいという、分析の素人でも不思議に思う内容となっている。現在のところ各焼却炉のダイオキシン濃度は国の新設施設の基準値(0.1ng-TEQ/m3N)を大幅に下回っている。その結果、大気中のダイオキシン濃度の起源を説明できないという笑い話にもならない状態でいる。真の排出量を知るためにはベルギーのように連続的な測定が必要であることはいうまでもない。
 ダイオキシン以外に排気ガス中や焼却灰や飛灰のなかの重金属などの有害物質や灰溶融炉による溶融物の有害物質など焼却に関連する基準が十分にないことやあっても分析方法の不備などで行政に対する不信があり、焼却に反対する区民も多い。

2.容器包装リサイクル法の問題点
 国が制定した容器包装リサイクル法では廃プラの分類が今までのような素材ごとと異なり、ペットとその他プラのみになった。ペットというのはポリエチレンテレフタレートであり、ほとんどがボトルである。ペットは別個に回収されること、素材が同じであるのでペレットに戻しやすく再生品を製造することは容易である。しかしながら、リサイクルの際のエネルギー消費や環境汚染、再生品の質の問題等を考慮するとリサイクルすることが良いことかどうかは意見の分かれることである。
 一方、経済産業省や環境省が定めたその他プラについては素材が多種であること金属とラミネートになっているものなど複合素材、複合材質の容器も非常に多い。これらから再製品ができるとは到底思えない。実際に製品となったNFボードや擬木、パレットなどをみても強度について疑問がある。そのために新しいポリプロピレンで補強が行われている。このことはプラスチックを生産したことのある企業や研究者は当然認識していて、材料リサイクルが不可能であったことを新聞で報道(告白)した業者もある。
 日本テレビではリサイクル製品を追跡している番組(アクション)を制作し、環境大臣が持参したハンガーがリサイクル製品ではない可能性を指摘している。それにもかかわらず、材料リサイクルの推進を掲げている環境省は不可能を強いているわけで反省するべきである。再生紙に偽装があったことからわかるように再生プラはバージンより高い価格であり、品質は劣悪なのである。

3.一般廃棄物の「その他プラ」のリサイクルの仕組みと問題点
 容器包装リサイクル法では企業が処理費を支払うことにしているが、実際には企業が支払う費用よりも自治体が日本容器包装リサイクル協会に引き渡すまでに支出する費用がはるかに大きい。
 プラスチックの質の問題であるが、先に述べたようにアルミ箔が重ねてある薬の包装材、レトルト食品など空気を遮断するための幾重にも種類の異なる素材の商品にプラマークが記されている。これらのプラゴミは分別しない限りそのまま材料リサイクルをすることは理論的に不可能なのである。
 プラスチックは製品になるまでに劣化防止、強度、柔軟性など目的に応じて1000種以上の添加剤を加えたさまざまな物質の混合物である。
 自治体はこのようなプラマークが着いているその他プラを各家庭から収集し、圧縮施設に運搬する。施設では袋を破砕してベルトコンベア上で多くの人が手選別で適合しないゴミを除く。適合したプラを圧縮機によってベール梱包し、リサイクル業者に引き渡す。ここまでが自治体の役目である。
 自治体の意向と関係なく、財団法人日本容器包装リサイクル協会のもとで落札したリサイクル業者がこのベールを引き取りに出張し、ようやくリサイクルが始まる。
 リサイクル業者は約250社あるということであるが、それらは材料リサイクル、ケミカルリサイクルが主で環境省が推進する材料リサイクルはパレット製造、擬木、NFボードの製造などが知られている。

4.あるリサイクル業者、ケミカルリサイクルの現場
 ケミカルリサイクルを請け負っている1つの業者で行われている作業について述べる。主にコークス製造に利用される。できた偽コークスを本物に5%ほど加えて製鉄に利用するのである。
 作業を簡単に述べると、引き取った自治体のベールをまず破砕し、プラ種類選別機でフィルムなどの軽量物と重量物に分け、それぞれ一次破砕機、手選別を行った後、磁選機にかけ、二次破砕機にかける。フィルムなどはドイツ製の比重選別機で塩ビを除去し、残存物を粒状に成型する。固形やボトル系の重量物は一次破砕の後、風選機にかけ、さらに二次破砕した後、分級する。軽量物から出来た粒とこれらを混ぜて大型の塊に成型してコークスにする。この企業の担当者はその他プラとして引き取ったゴミのうち、コークス製造では85%、高炉還元では75%が利用できるとのことである。別の企業では約50%との証言を得ている。残りは産業廃棄物となる。
 材料リサイクルでも収集したその他プラの約半量が利用不能で産業廃棄物として処理されている。

5.廃プラ施設周辺の健康被害
1)杉並区井草に東京都が建設した不燃ごみ(プラスチック、カン、ビンその他、燃やさないごみ)の中間施設は平成8(1996)年に稼働と同時に周辺住民が被害を訴えたことにより、問題が明るみに出た。この施設は収集車が回収した不燃ゴミを圧縮し、嵩を減らして東京湾の処分場まで運搬することを目的に建設された施設である。当時は原因が明らかでなく、東京都は原因の調査を行い、専門家集団を駆使して解明を試みた。
 杉並区は環境課が被害を調査し、周辺の住民を訪問したりアンケートを行った結果、同年の7月には864名中123名が不調を訴えた。11月のアンケート調査では、対象者5800名のうち回答者は1392名で、そのうちの319名が不調を訴えた。しかし、なぜか区の保健所は保健所に訴えがあり、認めた52名の住民のみを被害者と捉え、被害を受けた時期を特定した。その結果、7月が12名で被害のピークとしたのである。
 この結果は東京都が被害の原因を硫化水素とするために都合が良いことであった。東京都は施設を洗浄した水を処理せずに下水道に放流していた。そのために処理水中の硫化水素が下水道から発生し、住民に被害を与えたというストーリーをでっちあげたのである。その放流を中止したのが7月なのである。
 さらに杉並区が3年後の平成11年5月(1999年)に行った本格的な疫学調査により、それより1年前以降(平成10年から11年5月まで)にあらたに被害を受けた人数を調査した。保健所で計算した値は真実を示し、明らかに井草地区はその時点においても初期同様に対照の3地区(永福、久我山、和田)よりも被害を訴える人が多かったのであるが、最終的な報告書ではそれを改ざんして他の地区と変わりがないと報告をしたのである。したがって杉並病の新たな発生はないと結論したのである。したがって、現在も中継所は杉並区、中野区、練馬区の不燃ごみを集めている。これらの詳細はピコ通信(第107号、2007年7月23日)に記載した(文献1)。ようするに下水の放流を中止したので被害は収まったことにしたのである。
 被害者の18名が原因裁定を求めた公害調停委員会は2002年6月26日に化学物質を特定せずに中継所の稼働と健康被害との因果関係を認めた。しかし、被害を受けた時期を同年8月までとした。その原因は先に述べた保健所の有訴者のピークと下水放流の中止の時期の一致にある。先に述べたように、1999年の杉並区の疫学調査の改ざんした虚偽報告はこれを補強する材料なのである。
 この結果、現在は被害がないことになった。したがって市民や支援科学者の要求にもかかわらず、国、東京都、杉並区は健康調査を行うことを拒否している。
 一方、被害者は事件以後、アンケート調査を10年の間毎年行ってきた。現在は地元の市民連絡会がアンケートをつづけており、転入してきた住民が被害を訴えていることが判明している。重度の被害者は転居した人が多いが、転居した人も現地に住み続けている人も重篤となっている人がいるとのことである。
 転居して療養を続けている被害者の1人が現在、東京都に対して損害賠償を求めて裁判を続けている。詳細はピコ通信(第112号、2007年12月25日)を参照されたい(文献2)。杉並病については多くの著書や文献が発行されている。支援科学者のホームページ www.suginamibyo.comに資料のリストが掲載されているので参照されたい。
2)寝屋川におけるパレット製造工場周辺の健康被害
 大阪市寝屋川に建設されたパレット製造工場は住民の操業差し止めの申請が却下され、2005年4月から操業を開始した。住民は杉並病を調査し、有害物質発生を事前に察知し、有害物質の測定や疫学調査を準備していた。残念ながらその予測は的中し、被害が発生した。岡山大学の津田敏秀氏の疫学調査により工場を中心として700m以内と対照とした2800m以遠を比較したところ工場による被害の発生が判明した。また、地元の医師は化学物質過敏症の患者20名を認定している。
3)寝屋川ではあらたに4市(寝屋川市、枚方市、交野市、四条畷市)合同の廃プラ処理施設が2008年2月に稼働を開始した。それと同時に高い濃度のTVOC(総揮発性有機物質)が検出され、住民の危惧はあらためて現実のものとなった。パレット工場を含め廃プラ圧縮施設の操業停止の裁判は6月12日に結審を迎え、9月頃、判決が出る予定である。
4)廃プラ圧縮施設およびRDF(ゴミ由来の燃料)製造施設周辺の被害
 廃プラ圧縮施設やゴミを燃料とするために圧縮する施設周辺の被害はいくつか散見するが、なぜか大きな声にならない。著者らは被害の収集を行っているのでこの文章を見た方は是非知らせていただきたい。

6.健康被害が無視される理由
1)プラスチックからの有害物質の発生について沈黙する専門家
 プラスチックから有害物質が発生することはプラスチックの専門家やRPF(廃プラスチック由来の燃料)を製造する業者はほとんど認識している。さらに圧縮をすると大量に多くの化学物質が発生する。使用済みの廃プラや金属などが混入しているとさらに多くなるとのことである。また、これらは可燃性なので発火現象が起き、しばしば火災が発生する。プラスチックを大量保管することは大変危険なのである。有害物質が発生することやそれらが可燃性であることは某圧縮業者によるとすべての圧縮機メーカーは認識しているとのことである。
 このことはすでに樋口・林が総説を発表(ピコ通信、第82号、83号、文献3)しているが、杉並病発生を契機に東京大学大学院新領域創成科学研究科影本浩教授の研究室でプラスチックの原料物質を摩擦、圧縮および放置することによって多くの種類の物質が発生することを確認している。使用済みのプラスチックではさらに多種類の化学物質が発生することを東京大学大学院新領域創成科学研究科柳澤幸雄教授が報告している。メカニズムとしてはマイクロプラズマ反応などごく微細な面積でメカニカルによって発生する反応が産業総合研究所の研究者によって提唱されている。
 プラスチックから可燃性の有害物質が発生していることは健康面のみならず、災害の面としても大変危険であるにもかかわらず、なぜか一般の人には知られていない。おそらく業界もそれを擁護する行政も情報を隠しているからだと思われる。
 本年2月に関係5省庁の総合科学技術会議 科学技術連携施策群というグループの{総合的リスク評価による化学物質の安全管理・活用のための研究開発群「総合的リスク評価による化学物質の安全管理・活用に対する各省の取り組み」平成19年度対象施策・成果報告会}が開催され、たまたま著者はそれに参加する機会があった。
 国立環境研究所の野間幸生氏はその中で、「資源性・有害性をもつ物質の循環管理方策の立案と評価」と題して講演を行った。詳細については講演要旨のみで論文を読んでいないので不明な点が多いが、材料リサイクルを想定したプラスチックの圧縮で発生する有機物質について報告している。そのなかでは詳細な化学物質名が掲載されているのはウレタンのみである。それによると、熱をかけてウレタンを圧縮すると含窒素シクロ環、含窒素芳香族、芳香族アミン類、イソシアネート類、紫外線吸収剤、難燃剤、可塑剤、抗酸化剤、シクロ環など、各種添加剤や分解物など多種類の化学物質が検出された。イソシアネートは被害者の一人が原因物質と指摘している化学物質である。
 また、環境に関して、廃プラの手選別室および圧縮機周辺の空気を調査し、大量の重金属類、VOC類を検出している。この結果、圧縮機だけでなく手選別室の空気に高い汚染があることがわかった。
 著者は多くの廃プラ処理施設をこれまで見学しているが、その際の空気は粉塵だけでなく有機物質や目に見えないものの、粘着性の物質の存在を感じている。行政から発信した報告を聞いたことがなかったが、国立環境研究所ではおそまきながらリサイクルの現状で汚染物質が発生していることを明らかにした。
2)化学物質による被害についての行政および医学者の対応
 プラスチック処理の際にはすでに述べたように手選別段階、圧縮段階で作業者が有害物質に曝露される。杉並病や寝屋川事件のように住宅地に処理施設が建設されると住民がこぞって被害を受けるのである。
 杉並病被害者は区の保健所ならびに医者に「気のせい」、「更年期」といわれなき言葉で傷ついてきた。先頃はやりの硫化水素自殺のように即死するか伝染病のような症状であれば被害を認めるが「化学物質過敏症」はなぜか医学者の間で混乱がある。臨床医学の立場の人はほとんどが認めているにもかかわらず、毒性学の医者は決して認めようとしない。
 専門家ではないので断定はできないが、量―反応関係にこだわっているような古い医学者や研究者は「化学物質過敏症」のような人によって発症の仕方が異なる事象(遺伝子多型)については理解不能のようである。このことは環境ホルモン問題に対しても同じ事が言える。
 だが、事実、被害者(・患者)は存在する。患者を救うのが医学者のつとめであるし、バックアップするのが行政の筈であるが、医学者が「化学物質過敏症」を否定しているかぎり、行政もここぞとばかり追随して被害を認めないし、対策を取ろうとしない。被害者はこの時代に生きたのが不幸であるが、人間として同じような被害者が発生しないように被害者は何も知らされていない市民に警告を与える義務があると思う。
3)環境行政
 健康を守るための大気関連の法律はわずかしかない。たとえば環境基準ではベンゼン、など4つの物質がある。ダイオキシンは特別措置法により基準がある。そのほかは7つの化学物質の指針値がある。これらの基準や指針値は行政による測定の年平均で示される。しかし、たとえこの濃度を超えた数値が被害地で測定されたとしてもそれと健康被害との関連をつけるのはほとんど不可能である。
 廃プラ処理施設周辺で健康被害を受けたとして大気中の化学物質を測定してもわずかしかない項目の環境基準値(年平均であらわされる)を超えることは珍しい。なぜならば、測定は周辺360度の方位で連続的に測定することは不可能なので、たまにわずかの物質を測定した結果で検討されるからである。化学物質の種類も存在するだけでも十数万種はある。
 著者は環境省の中央環境審議会大気環境部会の有害大気汚染物質排出抑制専門委員会をほぼ毎年傍聴している。杉並区が中継所およびその周辺で毎年いくつかの化学物質濃度を測定しているので、国の調査報告と比較してみた。有害大気汚染物質の濃度は全国平均では年々減少しているが、中継所付近の大気濃度はそれらと比較すると非常に高い。また、検出限界を高く設定しているために検出限界以下と杉並区は報告している化学物質が多くある。その結果を普通の人が見ると濃度が低いと考えがちであるが、専門的に見ると、低くはないのである。全国平均とくらべても発生源周辺(一般環境、発生源周辺、沿道と3つの区分がある)の濃度よりも高い場合があり、中継所周辺の環境は他の地域と比較すると劣悪なのである。住んでいる方には申し訳ない言い方であるが、現在もなお、杉並区井草はシックタウンの町なのである。
 規制の対象となるのは排気基準である。たとえば東京都で言えば環境確保条例がある。この条例の排出基準は濃度で規制され、その値は想像できないほど高い値である。たとえば、ベンゼンでは環境基準の3万倍以上である。テトラクロロエチレンとトリクロロエチレンは1500倍、ジクロロメタンは1300倍である。これらの高い濃度が許容されているので、さすがに中継所からの排気ガスがこのような高レベルにはならない。しかし、排風量が大きければ、総排出量は非常に大きい値となり、施設周辺の空気は希釈されることなく、排気ガスで満たされることになるのは常識的にわかる。
 排出規制が濃度のため、大量の複数の物質を排出したとしてもわずかしか決められていない対象物質の濃度が超えていなければ、違反とはならない。
 一方、毒性についてはほとんど分かっていないと言っても過言ではない。毒性が不明なので、健康被害を証明するのは困難である。

                  (以下、次号)

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