| 「化学物質政策基本法」(仮称)を制定させよう!
事務局長・弁護士 中下 裕子
●化審法の見直し作業がスタート
化学物質審査規制法(化審法)の見直し作業が、環境省・厚労省・経産省の合同会合でスタートしています。化審法は、カネミ油症事件の発生が契機となり、昭和48年に、PCBなどの難分解性・蓄積性・毒性のある化学物質が新たに市場に出回ることのないように、事前にデータを届出させて審査し、製造使用を規制するために制定された法律です。当時は、世界初の画期的な法律でした。しかし、その後30余年を経て、今、その枠組みそのものを根本的に見直す時期を迎えていると思います。
●化審法の問題点
化審法の問題点は、まず第1に、法制定時に既に市場に出回っていた約2万種の既存化学物質に対しては、その適用が除外されたことです。これらの既存物質については、安全性点検作業が行われてきましたが、現在までに毒性等のデータ収集が完了したものは僅か300物質程度にすぎません。つまり、私たちは、安全性の確認のないままに、今もこれらの物質を大量に使用し続けているのです。これでは対策が後追いになるのも当然です。
第2に、規制の枠組みが、難分解性・蓄積性・毒性に限られていることです。しかし、良分解性であっても、大量に使用されたり、毒性が強い物質も、規制対象にする必要があります。またEUのように、非常に高い難分解性・高蓄積性のある物質(VPVB)は、たとえ毒性が不明でも使用削減に取組むことも必要です。
第3に、実際に規制された物質の数が極めて少数にとどまっていることです。現在、製造使用が実質的に禁止されているのは僅か16物質にすぎません。生産量の届出や表示が義務づけられているものも、23物質にとどまっています。約10万種といわれる世界市場の化学物質数に対して、この数はあまりにも少ないと言わざるを得ません。これでは健康被害の発生を未然に防ぐことなどできないのではないでしょうか。
●化学物質政策の基本法の必要性
さらに、問題は化審法だけでなく、現行の領域・用途別の縦割りの制度そのものにもあります。現行制度は、省庁別に対策が実施される仕組みとなっていますが、対策が省庁ごとにバラバラだったり、対策に「すき間」が生じることもしばしば起こります。過去の水俣病・カネミ油症などの公害事件から、最近のアスベスト問題まで、被害が発生してから慌てて対策を強化するという失態を行政が繰り返しているのも、ここに原因の一端があります。
化学物質には光と影があります。影の面へのコントロールの欠如が、過去さまざまな公害事件を生み、今またシックハウス・化学物質過敏症などの新たな疾患を発生させています。さまざまなガン、アレルギーの増加や、最近急増している学習障害・行動障害などの発達障害の発症にも、化学物質の関与が強く疑われています。多種多様で大量の化学物質の影の面を十分にコントロールするためには、共通の基本理念や戦略の下に、関係省庁が相互に連携し、一貫性をもって施策を総合的かつ計画的に実施することが不可欠です。そのためには基本法の制定と、行政組織の一元化が急務だと思います。今、政府内で「消費者庁」の設置が検討されていますが、行政一元化は化学物質管理の分野でも求められているのです。
EUでは、約8年かけて従来の制度を抜本的に見直し、既存法令を統合した新しい法律「化学物質の登録・審査・認可に関する法(REACH)」を制定し、昨年から施行しています。今こそ、わが国でも同じような取り組みを開始すべき時ではないでしょうか。化審法の見直しを機に、その前提たる基本法を早期に制定し、その下で化審法をはじめとする個別法の全面的見直しに着手すべきだと思います。
●化学物質政策基本法の内容
国民会議では、今般、「化学物質政策基本法」の試案を取りまとめ、立法、行政に提出するとともに、その実現に向けてロビー活動を行っています(4頁参照)。
基本法の内容は、同封の提言書をお読みいただきたいと思いますが、私どもは図のような法体系を構想しています。
基本法の基本理念・主な基本施策は表を参照して下さい。また、化学物質の登録・リスク評価等を司る一元的な行政機関として、「化学物質評価・調整委員会」(独立行政委員会)の設置を提案しています。さらに、施策の立案には、専門家のみでなく、市民を含むステークホルダーによる会議を開催し、十分な討議を経て、その結果が施策に反映されなければならないと提案しています。
●基本法制定を求める国民的運動を!
国民会議では、この提言を実現するために、より多くの市民・NGO・消費者団体・労働組合などに働きかけて、基本法制定を求める大きな国民的運動を展開していきたいと考えています。昨年のダイオキシン国際NGOフォーラム開催で発揮したNGOの力をさらに拡大強化して、基本法の立法化につなげていければと思います。どうか多くの皆様のご協力をお願いします。また、法案・運動へのご意見を、ぜひお寄せいただければと願っております。

基 本 理 念
@上市前のリスク評価(ノーデータ・ノーマーケットの原則)
A影響を受けやすい人々(胎児・子どもなど)や生態系への配慮
Bライフサイクル管理(研究開発から、製造、使用、リサイクル、処分に至るまで)
C予防的取組方法(予防原則)
D代替化の促進(代替原則)
E施策の制定へのすべての関係者の参加確保(協働原則)
F国際的強調
基 本 施 策(主なもの)
・化学物質基本計画の策定
・新規・既存化学物質の事前登録制度
・高懸念物質(発ガン性、生殖毒性物質など)への規制
・化学物質に関する情報共有、GHSに準拠した表示制度の構築
・非意図的物質の管理
・地震、火災、爆発事故などにおける飛散等の防止措置
・関係機関相互の密接な連携の下での施策の策定 |
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