重金属問題連続セミナー 第1回報告
鉛のライフサイクルとレジ袋問題
講師:京都大学環境保全センター教授 酒井 伸一先生

国民会議では、設立10年を記念して、今年度は重金属問題に積極的に取り組んでゆくこととし、重金属問題連続セミナーを企画しました。
第1回は、2008年3月29日、京都大学環境保全センターの酒井伸一先生をお招きして、東京麹町の食糧会館でお話をうかがいました。酒井先生のお話から身近なレジ袋と鉛の問題について考えさせられました。また、たくさんの方が参加され、熱心な質疑応答もあり、重金属問題への取り組みの重要性をあらためて確認しました。当日の酒井先生のご講演のうち、レジ袋と鉛の問題についての要旨を報告します。 (文責:広報委員会)
◆きめ細やかな分別収集に係るモデル事業
京大環境保全センターは京都市環境局とともに、環境省平成18年度容器包装廃棄物3R推進モデル事業の一環として、「きめ細やかな分別収集に係るモデル事業」を行った。プラスチック製容器包装ごみをより細かく分別することにより、よりリサイクルしやすい資源物として活用できる可能性があるかを探る研究である。
その背景には、プラスチック製容器包装ごみは家庭ごみの60%(容積)を占めること、京都市においてはモデル地区において「その他プラスチック」の分別回収を進めてきたが、「その他プラスチック」の分別収集・再商品化に関しては様々な議論がなされていることなどがある。
◆本実験の概要
京都市内の対象地区の245世帯中約3割の世帯の参加を得て、プラスチック製容器包装ごみを8種類に分別してもらい、アンケートとともに2006年12月と2007年1月の2回にわたって回収した。
8分別は、製品別にqプラ手さげ袋(レジ袋)、wラップ、e卵パック、材料表示に従った材質別にrPET(ポリエチレンテフタレート)、tPE(ポリエチレン)、yPS(ポリスチレン)、uPP(ポリプロピレン)、iプラその他、である。
◆きめ細やかな分別の可否についての分析
8種類の分別は、ほとんどの項目で80%以上が適正になされていたことから、素材別回収はかなりできるかなという印象であった。
ただし、素材別リサイクルのクォリティーを高めていくために、qPEとPPは複合素材として使われることも多いがこれをどうするのか、wラップ類にかなりPVDC(ポリ塩化ビニリデン)系素材が使用されているが(ラップ全体の約70%)、塩素除去との関係でこれをどうするか、e今回調査したプラスチック製容器包装ごみの素材マークの表示率は60〜70%程度にとどまったことから表示の改善、などの検討が必要であろう。
◆レジ袋に含まれる鉛量の把握とフローの推定
世界の鉛の全消費量は約590万t/年(2003)であるが、うち78%が鉛蓄電池、ついで無機薬品8%となっている。自動車用鉛蓄電池以外はほとんど最終製品のフローが不明である。
今回の実験と、京都市で毎年実施している京都市家庭ごみ細組成調査で回収されたレジ袋総計約2500枚を対象に蛍光X線分析を用いて鉛量を測定し、フロー量を推定した。
今回の調査では、レジ袋に含まれる鉛の濃度は0ppmから16,000ppmまでの幅があった(下図左)。鉛が100ppm以上検出された袋は、いずれも袋本体に着色されたもので、どの色だから必ず検出されるというものでもなかったが、色によって鉛の検出率に差があったことから、顔料として鉛が使用されていると考えられる。検出率が高かった順に、橙60.0%、緑29.4%、赤23.5%、茶19.0%、黄15.4%、その他5.9%、青0%であった(下図右)。
ちなみに、高濃度の鉛が検出されたレジ袋を使用していた企業8社に対して、その旨の報告と仕様の見直しのお願いを文書にして送ったが、対応はさまざまであった。しかし、その後の調査では、うち5社のレジ袋から鉛が検出されなくなったので、企業への告知の成果と考えられる。
◆レジ袋由来の鉛量の推算
京都市家庭ごみ細組成調査(H18年度)から求められるレジ袋の使用枚数は約5億枚(4,200 tのレジ袋が1枚約8グラムと仮定)で、全国換算では約400億枚であった。一方、自治体別レジ袋使用枚数のデータ(平均6.11枚/人・週)に基づいて全国で1年間に使用されるレジ袋の枚数を推定すると約405億枚となり、両者の推定はほぼ一致する。
レジ袋の色別鉛含有量とその色の使用率をかけて京都市におけるレジ袋由来の鉛量を推算すると、0.96〜2.2トン/年、全国のレジ袋由来の鉛量は84〜196トン/年と推定され、これは焼却対象ごみに含まれる鉛の20%程度を占める。
◆レジ袋の鉛削減など、質的な3Rの展開が必要
以上、今回の調査から、プラ手さげ袋(レジ袋)については鉛などの重金属類を高濃度に含むものがあること、レジ袋の排出に伴って国内で焼却されている鉛量は100〜200ton/年となることがわかった。重金属類制御といった観点からはこれらの3R展開、代替製品の使用・鉛フリーレジ袋への転換など早い総合的対処が求められる。
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