北海道洞爺湖町サミットに向けて動き出したNGO連合体
「2008年G8サミットNGOフォーラム」の試み
中間法人環境パートナーシップ会議 理事・事務局長/
2008 年G8サミットNGOフォーラム環境ユニット事務局 星野 智子
“市民に開かれたサミットを”をスローガンに、昨年1月末「2008 年G8サミットNGOフォーラム」(以下NGOフォーラム)が誕生した。今夏の北海道・洞爺湖サミット(以下G8)に向けて、地球規模の課題解決のために、G8諸国がサミットで適切な議論を行うように求めるために発足したNGOの連合体である。構成団体には、NPO法人日本国際ボランティアセンター(JVC)、NPO法人国際協力NGOセンター(JANIC)、(財)世界自然保護基金ジャパン(WWFジャパン)、(社)シャンティ国際ボランティア会、NPO法人環境エネルギー政策研究所、ピースボート(以上世話人の所属団体)などが含まれ、長く各所でNGO活動に従事してきた人々の知見と経験が結集されていると言える。(代表はJVC特別顧問の星野昌子氏)
上記団体のほか、政策提言やキャンペーン活動などを行っている100を超えるNGOで構成され、政府とは違った視点・立場で、途上国の貧困と開発、保健、教育、気候変動や生物多様性などの環境問題、軍縮や平和構築、人権問題に取り組み、現在活発に活動を展開している。G8サミットに向けて分野を越えて集まってネットワークを作り、政府とは“対話型”の関係を尊重しながら、具体的な政策提案を行っている。
NGOフォーラムは現在、主に以下の活動を行っている。
◆G8諸国や世界各国の市民社会と連携し、G8 諸国政府に対して要請・提言
◆サミット開催のあり方など、サミット議長国である日本政府に対しての提言
◆貧困・開発、環境、平和、人権問題とそれぞれの政策・構造的背景についての情報の普及
◆メディアへの働きかけを含むパブリック・アドボカシー
◆サミット開催期間中に世界の市民社会との対話や各種イベント
また、フォーラム内に課題別に「環境」「貧困・開発」「人権・平和」の“ユニット”が設けられている。3つのユニットが訴えている内容について、ここで紹介する。
●環境問題
環境ユニットではG8の前に開催される環境大臣会合(5月神戸)において「気候変動」「生物多様性」「3R」の3点が主要課題として取り上げられる予定ということを受けて、その3つに焦点を絞って、提言をまとめている。
◇「気候変動問題」:異常気象をもたらし、洪水・干ばつの頻発、水不足の深刻化、熱波や感染症などによる健康被害など、人類の生活基盤を脅かす地球規模の脅威である気候変動問題に対処するには、世界経済・社会システム自体のあり方を問い直さなければならず、気温上昇幅は工業化以前のレベルから2℃未満に抑えなければならないと訴えている。
◇「生物多様性問題」:食料や水の提供、木材、薬品、燃料、大気調節など私たちは“生態系サービス”と呼ばれる多くの“恵み”を自然から受けており、この生態系サービスを生み出す基盤である“生物多様性”の保全は、私たちの人間社会に欠かすことのできないものである。自然資源の過剰消費国でもあるG8諸国は、生物多様性問題への予防原則に基づいて生物多様性の保全を進めていくという政策決定を行い、世界に向けて宣言するべきである。
◇「3Rイニシアティブ」:04年のG8で日米が共同提案した“3Rイニシアティブ”の中で挙げられた、“物品等の国際流通に対する障壁の低減”ついては、有害廃棄物の途上国への輸出の道を開くものとして、注意する必要がある。そのため、国内処理原則を実現と環境正義(環境及び人権への配慮)を最優先させることなどを提言している。
●貧困・開発問題
貧困・開発ユニットが取り上げる問題領域は、「政府開発援助(ODA)」「革新的資金創出メカニズム」「貿易・投資」「保健・医療」「基礎教育・児童労働」「ジェンダー平等と女性のエンパワーメント」「気候変動と貧困問題」である。ミレニアム開発目標(MDGs)を目標の2015年までに確実に達成するためにも、G8諸国は、貧困・開発の分野で問題を解決するための明確な意思表示を行うとともに、過去のG8で約束した政策を実行に移さなければならないと訴えている。
●人権・平和問題
「世界人権宣言」の採択60周年にあたる2008年、非暴力と対話、人権と人間の安全保障を実現することが国際社会の緊急課題であるとして、「核軍縮・不拡散」「通常兵器の軍縮」「紛争予防・平和構築」「反「テロ」政策」「先住民族」「ジェンダー平等と人権」「グローバル経済と人権」などについて提言を行っている。特にアフリカ地域での武器移転や人権機関の強化、他の問題とクロスする課題解決策としてNGO・ボランティア活動を支える基盤の強化やジェンダー平等、関連する国内・国際的制度改革および教育の普及を求めている。
●ユースの動き
NGOフォーラム発足の同時期からユースでの動きも活発に進んでおり、今年6月にはユースサミットを東京で開催、5月横浜でのアフリカ開発会議でもユースの動きが出始めている。1997年の京都会議(COP3)、2002年ヨハネスブルグサミット、2003年世界水フォーラムなどでアクションを起こした、またはそれを契機に環境活動を始めた若者が、全国でネットワークし、知見を深め、地球環境問題を自分たちの問題としてとらえて、さまざまなかたちで動いている。活動がより有意義に機能するよう、連携・支援のしくみなど考えていきたい。
●広く、分かりやすく、伝えること
提言活動は積極的に行われ、政府に対しての申入れや国際的なNGOとの連携も広がりつつある。ただ、一般の人に向けて、わかりやすい内容か、参加しやすい活動か、という点についてはまだ十分ではないと言わざるを得ない。
G8自体があまり身近でないことであるのに加え、地球規模の問題と身近な社会問題(環境だけでなく、経済や人権、開発の問題)がつながっているという意識をより多くの人が持つにはいろいろな仕掛け・しくみが必要だと思われる。
●これからの活動
G8本番は7月7〜9日に北海道洞爺湖町で開催されるが、その前に各地で閣僚級会合が予定されている。環境分野では3月14〜16日に気候変動とエネルギーに関する閣僚級会合、5月には神戸で環境大臣会合が予定されている。5月には横浜でアフリカ開発会議(TICAD4)が開かれる。G8諸国だけではなく、温室効果ガス排出国、アフリカ諸国、BRICsなどから要人が招かれるが、NGOもこれらの会合時期に併せ、NGO専門家会合や、国際シンポジウムを予定している。サミットに先駆けてCivilG8と呼ばれる政府と各国から招かれるNGOの対話の機会も予定されており、北海道ではサミット開催と同時期に「オルタナティブ・サミット」と称して、NGO・市民によるさまざまなイベントが札幌を中心に予定されている。
世界で深刻化する課題をG8や先進国のリーダーだけで決めるのではなく、“市民に開かれたサミット”を求めて7月まで、全力疾走になりそうだ。この経験によって、NGO同士の連携によって相乗効果とより強いインパクトを生み出すこと、NGOが政府と建設的に対話すること、わかりやすく市民に伝えることなど、多くの成果を得ることができると期待している。
詳しくは、http://www.g8ngoforum.org/をご覧いただきたい。
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