| 国民会議の10年と今後
国民会議事務局長・弁護士 中下 裕子
●走り続けた10年間!
おかげさまで、国民会議は今年10周年を迎えました。
「物言えぬ野生生物や未来世代の子どもたちに取り返しのつかない事態が生じることを、何としても回避しなければ……」とのやむにやまれぬ気持ちに突き動かされて立ち上がったのですが、活動を始めてみると、化学物質問題は、広範な領域にわたる、奥の深い問題であることがわかってきました。
最近、連日のように中国製ギョーザへのメタミドホス等の混入事件が報道されていますが、この問題を例にとっても、その背景には、食品安全問題から、農薬・殺虫剤の管理、化学物質全般の管理、消費者安全の問題、さらには地産地消や食文化のあり方の問題に至るまで、さまざまな政策領域が重層的に交差しており、対策を立案するにあたっては、このような多角的視点からの検討や政策の統合が不可欠といえます。
ところが、現行の縦割りの行政組織の下では、このような省庁横断的・複合的課題に迅速かつ適切に対処することは難しく、どうしても対症療法だけに終始して、なかなか抜本的対策にまでは至らないのが実情です。だからこそ、縦割りにとらわれずに、総合的・多角的に問題の所在をとらえ、本質的な解決策を立案できる能力を持つNGOの出番!といえます。
幸い、国民会議には、化学汚染の未来世代への影響を憂慮し、抜本的対策の実現を望む、さまざまなジャンルの専門家や、市民科学者、市民の活動家らが、多数結集しています。これらの方々の共同作業によって、国民会議は、さまざまな課題について抜本的対策の提言活動等を重ねてまいりました。この間に行なった政策提言・意見提出(パブコメを除く)は16回以上、シンポジウム・学習会の開催は60回以上にのぼります。まさに、走り続けた10年間でした。
●ダイオキシン・環境ホルモン対策は前進したか?
では、この間に、ダイオキシン・環境ホルモン対策は進んだのでしょうか。
ご承知のように、国民会議では、まず、当時対策の遅れが目立ったダイオキシン対策の提言活動に取り組みました。特別立法の提言(第1次)から、母乳・食品対策(第2次)、素材対策(第3次)の各提言を取りまとめ、内閣官房長官をはじめ、環境庁、厚生省、農水省の各大臣とも意見交換を行い、国会議員にもロビー活動を行いました。まもなくして、政府は、関係閣僚会議を招集して「国を挙げて対策に取り組む」ことを宣言し、「ダイオキシン対策基本指針」を策定しました。国会でも、「ダイオキシン類対策特別措置法」が議員立法で成立しました。不十分な点もありますが、これらによって、日本のダイオキシン対策は大きく前進したと言ってもよいでしょう。
環境ホルモン対策に関しては、フタル酸エステル類について、弁当製造時に使用する手袋、子どものおもちゃ、医療器具などでの使用制限が実現しました。ところがその後、「環境ホルモンは大した問題ではない」という声が大きくなり、この分野の報道がめっきり少なくなってしまいました。環境省も、環境ホルモン物質リストを廃止するなど消極的姿勢に転じたのではとの懸念もありましたが、その後も野生生物や子どもの健康影響などの調査研究を続けています。最近では、10万人の子どもを対象にした、これまでにない規模の疫学調査も計画されています。国民会議では、ニュースレターや学習会等を通じて、環境ホルモン研究の動向を紹介し、問題の重要性を指摘し続けてきました。中でも、子どもの環境保健問題を最重要課題の一つと位置づけて、特別立法の提言や、ブックレットの刊行、シンポジウム・学習会の開催等の啓発活動を行なってきましたが、こうした取り組みが行政を動かしつつあるように思います。
この他、循環型社会形成推進基本法、PCB廃棄物特別措置法、土壌汚染対策法、アスベスト救済法、化審法改正、廃棄物処理法改正、自動車、建設、食品などの各種リサイクル法の制定・改正など、この10年間に化学物質・廃棄物に関連する多くの法律が制定・改正されました。内容には不十分な点もありますが、対策のスピードアップという面では、行政の姿勢に変化が現れてきています。また、これらの法制定・改正の過程への市民参加も大きく前進しました。現在も、複数の国民会議の会員がこれらの審議会等の委員を務めています。そのことによって、情報公開や意思形成過程の透明化が一層進展するようになりました。もちろん、まだ少数派ではありますが、こうした市民参加の進展が国民の意識向上にも大いに寄与していると思います。
●重金属問題の連続学習会にご参加を!
こうした10年間の成果を踏まえて、国民会議では、今年度から重金属の問題にも取り組みたいと考えています。毛髪検査を受けられた方は、水銀や鉛、ヒ素などの濃度が高いことに驚かれた方も多いのではないでしょうか。重金属問題は古くて新しい問題です。重金属の汚染は大人よりも子ども(胎児を含む)の方が深刻で、環境ホルモンと同様に、子どもの発達への影響が懸念されています。こうした重金属問題をよく理解するために、以下のような連続学習会を企画しています。ぜひご参加下さい。
q第1回:3月29日(土)午後1時30分〜4時30分
テーマ:鉛のライフサイクルとレジ袋問題
講 師:酒井伸一京都大学教授
場 所:食糧会館
w第2回:4月20日(日)午後(予定)
テーマ:重金属コントロールに関する国内外の動向
講 師:環境省担当者ほか
場 所:未定
e第3回:5月(日時未定)
テーマ:毛髪検査分析結果報告会
講 師:森脇靖子常任幹事ほか
場 所:未定
r第4回:6月(日時未定)
テーマ:子どもの健康と重金属
講師・場所:未定
t第5回:7月(日時未定)
テーマ:廃棄物処理施設と重金属汚染
場所・講師:未定
●国民会議のこれからは?
このように、この10年間で、国民会議の活動は一定の成果を収め、内外からも高い評価を受けています。それは、全て、会員の皆様の熱い支持に支えられてこそ実現できたことです。言い換えると、会員の皆様のご支援・ご協力がなければ、自主的な組織にすぎない国民会議は、活動を継続することも、存続することさえもできません。その意味で、国民会議のこれからの鍵を握るのは、まさにお一人お一人の会員の意思と行動であると言っても決して過言ではありません。
10年間の精力的な取組みにもかかわらず、アレルギーや発達障害児が増加傾向にあるなど、残念ながら、まだまだ子ども達が安心して生まれ育つことのできる環境の確保には程遠いのが現実です。したがって、今後も国民会議の果たす役割は重要であると思います。しかし、危機の進行の速さを考えると、従来の活動を継続するだけでなく、より一層取組みを強化しなければ間に合わなくなるのではとの懸念をぬぐえません。そのためにも、もっと多くの国民に、国民会議の活動を知ってもらい、趣旨に賛同して活動に参加してもらうこと――つまり会員拡大――が不可欠です。
10年前、158名の呼びかけ人(女性弁護士)と50名の発起人とで創立した国民会議の会員数は、現在約1700名を数えるまでに至っています。しかし、これではまだ各界に強い影響力を発揮することはできません。欧米では何十万〜何百人規模のNGOもあり、絶大な影響力を行使しています。しかし、日本のNGOは小規模なものが多く、1万人を超えるNGOでさえごく少数です。国民会議が各界への影響力を増大させ、提言の内容を実現するためには、少なくとも1万人を超えるNGOへと成長を遂げることが不可欠だと思います。そうすれば、財政基盤も安定し、スタッフを増員して、活動範囲を大幅に拡大することが可能となります。
●会員1万人を目標とする拡大キャンペーンにぜひご参加下さい!
そこで、10周年を機に、会員1万人を目標として会員拡大のキャンペーンを開始することを提案します。まず、今年度は倍増の3000人を目指したいと思います。会員の皆様のお一人がお一人の会員を増やしていただければ、すぐに達成できる数字です!!
国民会議には、「日本の良心」と呼べる方々が多数集まっています。さらに日本中の良心を国民会議に結集しようではありませんか。皆様の親族、知人、友人に、「物言えぬ野生生物と未来世代の子どもたちのために、ぜひ国民会議の会員となって、ご一緒に声を上げていきましょう!」と働きかけてみて下さい。きっと、その熱意が伝わると思います。
また、国民会議では近く、このキャンペーンを推進するためのプロジェクトチームを発足させる予定です。そのメンバーを広く募集しております!! メールを通じての参加も可能ですので、遠方の方でも、協力しても良いという方はどなたでも事務局までお申し出下さい。
主権者として、自らが政策のあり様を示し、その実現のために粘り強く働きかける――そんな国民が増大することによってはじめて、日本の環境政策の大いなる進展が可能となるのではないでしょうか。皆様の主体的なご支援、ご協力を願っております。
| 10年間の主な活動
●政策提言活動
- ダイオキシン類緊急対策提言(第1次〜第3次、1999〜2000)
- 「ダイオキシン対策基本指針」に対する意見書(1999)
- PRTR法案に対する意見書(1999)
- 「循環型社会基本法」(仮称)の立法提言(2000)
- PCB対策に関する提言(JPEN、2000)
- 土壌汚染対策法案に対する意見書・NGO共同声明(2002)
- 容器包装リサイクル法の改正提言(2002)
- 「子ども環境保健法」(仮称)の立法提言(2003)
- 「ExTEND2005」に対する意見書(2004)
- 「アスベスト対策基本法」(仮称)の立法提言(2005)
- 「化学物質汚染のない地球を求める東京宣言」署名提出(2005)
- 鉛のリスク削減に関する提言(2006)
- 化学物質管理のあり方に関する市民からの提案(新化学物質政策NGOフォーラム、2007)
- ダイオキシン類対策特別措置法改正に向けての提言(2007)
- その他、パブコメ意見提出多数
●ストックホルム条約成立に向けた取組
- 「PoPs廃絶日本ネットワーク(JPEN)」を結成し、国際会議でロビー活動を行う(1999〜2001)
- 国内でシンポジウム・学習会開催
●環境教育ビデオ「4Rゴミダイエット〜ゴミと循環型社会」の制作(2002)
●調査研究活動
●国民会議ブックレットの刊行
- 「化学汚染から子どもを守る」(2003)
- 「食品のダイオキシン汚染〜ダイオキシンから身を守るために」(2003)
- 「知らずに使っていませんか?〜家庭用品の有害物質」(2004)
- 「公害はなぜ止められなかったか?〜予防原則の適用を求めて」(2005)
- 「知らずに吸っていませんか?〜暮らしの中のアスベスト」(2007)
●シンポジウム・学習会の開催(主なもの)
- 「ダイオキシン緊急提言に向けて」(1998)
- 「食品・母乳汚染を考える」(1999)
- ピート・マイヤーズ氏講演会(1999)
- ダイアン・ダマノスキ氏講演会(1999)
- ダイオキシン・シンポジウム in 所沢(1999)
- 「PoPs廃絶のために」(2000)
- 「循環型社会基本法の制定に向けて」(2000)
- 「安全な医療を目指して」(2001)
- 「循環型社会とプラスチックごみ」(2001)
- 「ポール・コネット氏を囲んで」(2001)
- 「土壌汚染対策法はこれでよいのか!?」(2002)
- 「循環型社会における廃棄物処理とダイオキシン対策」(2003)
- パール・ロザンダー氏講演会(2003)
- 「塩ビとフタル酸エステルの昨今」(2004)
- 岡山市地域セミナー(テーマ:子ども環境保健問題、2004)
- 佐賀市地域セミナー(同上、2005)
- 「日本のお米は大丈夫?〜米のカドミウム汚染」(2005)
- 「今、アスベストの何が問題か〜アスベストのない社会をめざして〜」(2005)
- 新・子どもプロジェクト連続セミナー(全5回開催)(2006〜2007)
- 「プラスチックごみ中継基地の問題点」(2006)
- ダイオキシン国際NGOフォーラム(2日間開催)(2007)
●HCWH『医療廃棄物の非焼却処理技術』の翻訳、ホームページ掲載(2006)
●ニュースレターの発行(年6回) |
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