ニュースレター 第48号 (2007年10月発行)
ポスター発表と魚介類汚染

国民会議常任幹事 森脇 靖子

 国民会議(NGO)としてポスター・セッションで発表しました。日本の魚介類のダイオキシン汚染の実情をポスターによって内外のダイオキシン研究者に知らせるのがその第一の目的です。食品チームで2001年以来取り組み、ブックレット『食品のダイオキシン汚染―ダイオキシンから身を守るために』(2003)で公表したことと、水産庁が毎年公表している「魚介類中のダイオキシン類の実態調査について」(1999〜2005)を中心に、日本のダイオキシン汚染の実態と現状を調査・分析したものです。その上で、結論として、ブックレットでも提言したように、q日本のダイオキシン耐容一日摂取量を現行の4ピコグラム/gから2ピコグラム/gへ下げること。w食品の基準値を早急に設定し、この基準値に基づいて高濃度汚染魚の規制を行うべきであること、e特に女性、妊産婦へ食事指導をすること、などの必要性を訴えました。
 上記の水産庁の7年間の「実態調査」を分析してみると、特に日本の沿岸魚のダイオキシン汚染は、この7年間ほとんど改善されていません。東京湾、大阪湾などの高濃度汚染魚である、コノシロ(コハダ)やスズキは汚染濃度がここ数年で約25%減少していますが、アナゴ(4.62ピコグラム/g)を含めたそのほかの大衆魚(アジ、サバ、カツオなど)はやや数値が高くなっているのです。こうした沿岸魚の実態に加えて、輸入魚のうちでクロマグロの汚染が酷く、平均で9.36ピコグラム/g、トロは赤身の約12倍以上も高く、寿司一貫(約20グラム)で、日本の耐容一日摂取量(TDI)4ピコグラム/kg・体重にほぼ達してしまいます。もともと江戸前の海の魚を使って誕生した握りずしは、まさに東京湾の沿岸海域の魚(コハダ、アナゴ、エビ、ヒラメ、貝類など)とマグロが使われます。日本の沿岸のダイオキシン濃度や輸入マグロが高い現在では、一人前の握り寿司のダイオキシン濃度は、ネタの選択にもよりますが、どうしても高くなってしまいます。ポスターに載せた握り寿司の写真と計算されたダイオキシン量は海外のスシブームもあって多くの外国人にも注目されました。
●バルト海のニシンやサケのダイオキシン汚染と対策
 今回の発表で、私たちのテーマに近い発表を行っていたのが、スウェーデンでした。EUでは食品のダイオキシン汚染に関しては食品別に最大値を決め、最大値以上の食品は市場への流通を禁じています。スウェーデンもEUの一員として、このEU規制(魚:8ピコグラム/g、2006年規制)に従っていますが、例外として大西洋海域で最も汚染の進んだバルト海の魚(特に高脂質の魚)に関しては、モニタリング結果報告と食事勧告を条件に最大値を超えていても市場流通が許されています(実際にはスウェーデンの市場でバルト海のニシンやサケを見ることはほとんどないそうです)。スウェーデンの国立食品局(National Food Administration)が、バルト海で捕れるニシン、スプラット(ニシン科の小型の魚)、サケなどの高脂質魚の海域別モニタリング調査を(2003年以降)おこない、その情報を公開しています。バルト海では北部ほどダイオキシン濃度が高くなっています(一般に10ピコグラム/g以上)。
 バルト海の魚は、ニシン、サケなどの高脂質魚を除いて一般に汚染濃度は低く、サケに関しては、バルト海中部から南部で捕獲される4.4kg以下で体長72cm以内、ニシンに関してはバルト海南部で捕獲されるものだけ(最大値を目安として決められているが、不確実性は免れない)を、どちらか一方、最大で月1回だけ食べてもよいと勧告されています(特に少女や妊産婦)。若い人への教育を含めて食事勧告がしっかりなされているようです。こうした勧告が守られていることも国立食品局の別の追跡調査から分かります。日本人のダイオキシン摂取量の魚の寄与率は約90%、スウェーデンのそれは約35%にすぎません。スウェーデンの耐容週間摂取量は14ピコグラム/kg・体重、1日当たりにすると2ピコグラム/kg・体重で、日本の半分です。
 こうしたバルト海の例からも、日本の高濃度汚染海域(東京湾や大阪湾など)の高濃度汚染魚あるいは輸入クロマグロについての食事勧告が必要なことは明らかです。そのためにも基準値の設定、耐容一日摂取量の見直し、摂食勧告を含む食事教育など日本でも日本の事情に合った国の対応が必要なのです。
 今回の会議では、アジアの国々、特に韓国や中国などから多くの参加がありましたが、各国内の食品、特に魚介類の汚染や対策について体系的調査はなく、大気や底質のダイオキシン汚染あるいは産廃リサイクル場の調査(中国)などが多かったように思います。その他松崎、水野両氏のご報告のように、臭素化ダイオキシンおよびPBDEsの汚染・毒性・摂取量については、様々な角度から取り上げられていました。魚介類についても、日本全体、東京都、大阪府、スウェーデン、アメリカ合衆国、エストニア、韓国などの国々の発表がありましたが、さらなるデータの蓄積、そして人体毒性、耐容摂取量についてダイオキシン類(塩素化)と総合的に関連付けて捉えるためには、今後の調査・研究を待たねばならないようです。

 

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