| 油症次世代影響とポスター発表
国民会議常任幹事 水野 玲子
9月3日から東京のホテルオークラで開催された国際ダイオキシン会議について報告する。久々に日本で開催されるとのことで、再び国内の科学者の関心が呼び戻されたのか、かつてのダイオキシン問題の高まりを彷彿させる800件近い発表が日本を含めて各国からあった。ここでは筆者が関わった『カネミ油症の次世代影響』の発表、その他495件のポスター発表の中からいくつかの傾向、注目される研究について簡単に報告したい。
●油症の次世代影響
カネミ油症の問題はPCBとダイオキシンの人体影響の問題であることから、世界の研究者の関心は高い。口頭発表の油症分科会では日本や台湾の油症に関する報告があったが、ポスター発表では、カネミ油症被害者支援センター(YSC)が油症の次世代影響について報告した。それはPCBやダイオキシンの汚染油に直接暴露されていない油症2世の健康状態についての調査である。動物実験では、すでに数世代に及ぶ汚染物質のエピジェネテックな影響が示唆されているが、今回のYSCの報告はヒトにおいても次世代影響が多様なかたちで現れることを示した。
特に目立った2世の病気は中耳炎(12%)、低身長(12%)であった。中耳炎については、これまでにオランダにおけるPCB/ダイオキシンの乳幼児影響調査や台湾の油症の子供の事例からも増加の報告があり、また、低身長については、ダイオキシンが甲状腺ホルモンを直撃することから、クレチン症などにみられるように、それによる成長抑制の可能性も示唆される。その他にも、性染色体異常や子宮内膜症、思春期遅発症などの遺伝子や内分泌機能への影響、多動症、学習障害など子供の行動、神経、発達などへの影響も多々見られた。
●PFCs(過フッ素化合物)
過フッ素化合物といえば、非常に安定な化合物であり環境中で分解されにくく、新しい環境汚染物質として世界的に関心が高まっている。今回PFCs関連の報告は20件以上あり、家庭のチリやほこり、水系への拡散、ヒトの尿、土壌などと測定領域の幅は広く、東京の玉川底泥のPFOSやPFOAの測定、また、中国からはヒトの血液サンプルの測定結果などが報告された。
●PBDE(ポリ臭化ジフェニルエーテル)
コンピューター、テレビ、カーペット、カーテンなどの難燃剤として幅広く使用されている汚染物質PBDEに関する発表が10件前後みられた。台湾からは食生活を介して母乳に取り込まれるPBDE、そして日本の千葉大グループからは、PBDEが胎児の成長と発達に及ぼす悪影響を示唆する報告があった。
●ダイオキシンの排泄
愛媛大グループは、ネズミの餌にダイオキシンと共に炭素の吸着剤を混ぜてその排泄を調べた。その実験によれば、ダイオキシン入りの餌のみ投与したラットは投与量の88%、炭素の吸着剤と共にダイオキシンを投与したネズミは投与量の2.8%が蓄積されており、ダイオキシンの排泄が高まることを報告した。このテーマは今後さらに重要となるだろう。
●その他
琵琶湖のカワウの肝臓が高濃度のダイオキシン類に汚染されており、その濃度は2001年から2005年にかけて減少していないという愛媛大グループの報告があった。ダイオキシンだけでなく、環境ホルモン物質の生態毒性リスクについて、かつて‘奪われし未来’で警告された生態系における上位の生物への生物濃縮が現実のものとなっている可能性も窺われ、長期的なモニタリングの必要性が提起された。
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以上、簡単ではあるが、日本ではダイオキシン問題の社会的関心の高まりが低下したかのような昨今だが、世界ではこの問題への取り組みは着実に進んでおり、日本の科学者たちの地道な取り組みはけっして萎えてないという印象を受けた会議であった。
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