ニュースレター 第47号 (2007年8月発行)
日本海のダイオキシン汚染と韓国の海洋廃棄物投棄

国民会議食品チーム 森脇 靖子

 韓国の海洋水産部の報告書(2006年12月)の一端が韓国のジャーナリストによって明らかにされました1)。最も衝撃的だったのは、廃棄物、畜産糞尿、下水汚泥などの海洋投棄(黄海1カ所、日本海2カ所)です(昨年は880万トン)。特に浦項(ポハン)沖から日本海への投棄が最も多く、浦項沖の海底堆積物(底質)ではPCBやダイオキシン類の高濃度汚染が報告されています。底質のダイオキシン類濃度と魚介類の汚染は比例するので当然、韓国の沿岸魚のダイオキシン類濃度は以下に示すように、相当高い値です。
 朝鮮半島東側、釜山の北に位置し、日本海に面した浦項といえば山陰沖とは目と鼻の先。対馬海流の流れは複雑で、三分岐説、蛇行説がありまだ詳細に解明されていませんが、対馬海流に乗って、ダイオキシンやPCBなどの汚染物質は日本海を北東に向かって北海道方向へ移動することは確かです。最近ニュースで報道された北九州市や長岡市などの日本海沿岸部の光化学スモッグ注意報のように、海の化学物質も海流にのって拡散するのはありうることでしょう。
 日本海の魚介類のなかで高濃度のものが数種類あることは、水産庁の平成11年度から17年度の魚介類調査(「魚介類中のダイオキシン類の実態調査について」)でも明らかにされていました。特に顕著なのは、ハタハタ、ホッケなどの魚やズワイガニやベニズワイガニです。しかしながら、その汚染源は不明のままです。

韓国の魚介類のダイオキシン類汚染
 韓国の報道記事から、韓国の魚のダイオキシン類汚染濃度について見てみると、タチウオ4.625pg/g(pgは1兆分の1g)、アカムツ4.597pg/g、ハモにいたっては130pg/gと驚くほど高濃度の汚染です。これらのどの魚も脂質含有率が高く、日本でも同様に高汚染魚です(ただし日本にはアカムツのデータはありません)が、このデータを見る限り、日本より汚染は深刻だと思われます。さらに、ニシン、サバ、サワラ、イシモチ、サンマ、ハタハタなどが1〜3pg/gの濃度です。これらの魚はサンマを除いて、日本でも1pg/g前後の汚染魚です。日本のサンマに関して言えば、秋に太平洋側を南下し、平均濃度は0.24pg/gとかなり低い値で、北海道のシロサケ(天然)とともにあまり心配せずに食べられる魚の一つです。おそらく、日本海系の韓国のサンマは汚染濃度がさらに高いと考えられます。魚介類の詳細な汚染度を知るには、韓国の海洋水産庁による調査結果の公開が是非とも必要です。

ズワイガニ、ベニズワイガニはダイオキシン類に汚染されている
 脂質含有率の低いカニ類は汚染が低いはずであるにもかかわらず、山陰沖と北陸沖のズワイガニとベニズワイガニのダイオキシン類汚染濃度が高いのです。この二種のカニについては、平成16年度から、全体(丸ごと)ではなく、脚肉(筋肉)と内臓(肝膵臓)に分けて測定され、肝膵臓が筋肉の約2〜4.5倍汚染が高いことが分かりました(表1)。脚肉だけを食べていれば安心といえます。この表から分かるように浦項に近い山陰沖の方が北陸沖よりダイオキシン類濃度が高くなっています。ズワイガニ、ベニズワイガニはそれぞれ水深200〜400メートル、400〜2300メートルの沖合の砂泥底に生息し、海底に棲む魚介類を主として捕食していることからも、沖合の底質の汚染が進んでいることが推測されます。
 ちなみに、北海道の太平洋側やオホーツク海産のケガニやタラバガニの汚染濃度は0.5pg/g(全体)前後です。やはり日本海側の汚染の方がひどいのです。

表1.ズワイガニとべニズワイガニの部位別ダイオキシン類濃度の比較3)(pg/g)
  ズワイガニ べニズワイガニ
全体 筋肉 肝膵臓 全体 筋肉 肝膵臓
N 濃度 N 濃度 N 濃度 N 濃度 N 濃度 N 濃度
山陰沖 2 3.18 2 0.27 1 6.80 6 6.38 2 0.44 1 28.67
北陸沖 1 0.94   -   -   - 1 0.43 1 15.70
N:検体数

表2.日本海のダイオキシン類高濃度汚染魚の比較3)(pg/g)
  ハタハタ ホッケ アカカレイ
  N 濃度 N 濃度 N 濃度
山陰沖 2 2.16 0 - 5 3.72
北陸沖 0 - 6 1.83 1 0.94
東北沖 4 1.27 4 1.27 0 -
北海道沖 1 1.41 6 0.89 0 -
N:検体数

ハタハタ、ホッケなどのダイオキシン類の高濃度汚染
 日本海側で汚染濃度の高いハタハタ、ホッケ、アカガレイについて詳しくみて見ましょう(表2)。どの魚も脂質含有率が高く、主として水深300メートル前後の沖合の海底の砂泥底や岩周りに生息しています。これらの魚の生態を考慮すると、食物連鎖も含めて、日本海沖合の底質のダイオキシン類濃度の影響を受けているといえそうです。

 どの魚も検体数(N)が少ないので断定はできませんが、山陰沖から北陸沖、東北沖と北東に上っていくにつれダイオキシン類濃度がほぼ低くなっています。山陰沖のハタハタやアカガレイの汚染濃度はそれぞれ東京湾の高濃度汚染魚である、コノシロ(平均で2.37pg/g)、スズキ(平均で3.11pg/g)に近い値です。このようなダイオキシン類の汚染源が日本海沿岸の日本の都市部にあるとは考えにくいのです。
 残念ながら、海は化学物質の最終ごみためです。地中海のクロマグロの汚染が驚異的に高くなっていること(平均で5.17pg/g)を考えると、同じように半閉鎖性の日本海の汚染を真剣に考えなければならない時期に来ているのではないでしょうか。日本海に拡散するさまざまな化学物質による魚介類汚染について、魚介類資源の枯渇が言われ近海魚の重要性が叫ばれている今こそ、漁業資源の確保と安全性を視野に入れながら、ダイオキシン類を初めとするさまざまな化学物質汚染の低減化を、中国を含め韓国、ロシアなどの沿岸各国で模索する必要があると考えます。

1)http://www.janjan.jp/world/0707/0707060496/1.php
2)ダイオキシン類濃度単位の表記は、正確にはpgTEQ/gですが、pg/gと表記しています。
3)表1,2は水産庁「魚介類中のダイオキシン類の実態調査について」(平成11年度〜17年度)より作成

 

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