ニュースレター 第44号 (2006年12月発行)
記念フォーラム 第3分科会
「廃プラスチック問題」

 2006年4月17日、東京23区及び清掃一部事務組合は、2008年度から23区全域で廃プラスチックを「可燃ごみ」として収集し、焼却処理するとの記者発表をしました。これまで廃プラスチックは「炉が傷む」「塩化水素の発生によって健康被害が発生する」などの理由から「不燃ごみ」として処理してきました。焼却によって発生するダイオキシンや重金属類などの有害化学物質は大丈夫なの? ごみ減量化・資源化の流れに逆行するのでは? 他によりよい代替手段はないの? いくつもの「?」に対して私たちはどう考え、行動すべきか。分科会で3名の方からお話いただきました。

■村田徳治さん(循環資源研究所・所長)
 廃プラスチックはマテリアルリサイクル(再生利用)に適したものではありません。プラスチックといっても種類は多様で、何種類もの樹脂が複合している製品もあります。添加剤を加えないと、原料として利用できる品質に分別精製することができません。ガラス瓶や空き缶は、溶融・成型すれば新しい瓶や缶ができあがります。しかし、廃プラスチックは劣化してしまうので低品質の再生品にしかなりません。また、マテリアルリサイクルは、原料リサイクルや埋立てよりもコストが多くかかります。ドイツ大手総合化学メーカーBASF社も、廃プラの再生は低品質の製品をつくるだけで、廃プラ処理の本質的な解決にはつながらないと考えています。
 塩化ビニール樹脂特有の問題もあります。塩化ビニールに含まれる塩化水素は燃やすとダイオキシンが発生します。塩化水素が入っていると燃料として使えないため、焼却妨害にもなります。除去処理には多大なコストがかかってしまいます。
 次に、日本のごみ処理ではエネルギー回収がほとんど行われていません。環境省は10%以上エネルギー回収できれば、廃プラスチックを都市ごみ焼却炉で焼却してもよいという方針を示しています。しかし、ドイツではごみ焼却を原則として禁止しており、ごみを焼却する場合は75%以上のエネルギー回収を義務付けています。日本には、全国1374カ所(2004年度)の施設のうち、発電をしている施設が281(20%)、発電効率10%以上の施設は153カ所(0.9%)しかありません。日本のほとんどの焼却炉ではエネルギー回収施設もなくエネルギーは無駄に捨てられています。一方、ヨーロッパの複数の国では給湯施設が普及しているので、給湯パイプを利用して地域暖房や厨房・風呂などに温水を供給しています。ヨーロッパのごみ焼却炉は、ごみを燃料とするエネルギー供給プラントなのです。日本にはこのような給湯パイプがないので別の方法を考える必要があります。
 フィードストックリカバリーは、原料回収であってリサイクルではありません。日本でガス化溶融炉と言われるものは単なる焼却炉がほとんどです。RDF(廃プラ固形燃料)は塩ビが混入したまま燃やしているので、塩化水素やダイオキシンが発生しているのではないかと考えられます。都市ごみをセメント焼成用燃料にするなどの資源化技術は、埋立地が不要というメリットがあります。ただし塩ビや塩が混入してしまうという障害は残ります。
 今後の提言として、第一に、エネルギー回収のために、コークス炉を利用して廃棄物を熱分解・ガス化して水素に変え、ガスの配管で水素を供給するという手法をとりいれるべきです。第二に、市町村単位でのエネルギーの有効活用という視点が必要です。実際、北海道では生ごみのメタンを活用している事例があります。第三に、拡大生産者責任に基づき、プラスチック生産者に課徴金をかけて資源化費用をまかなうことが望ましいと考えます。循環型社会の構築のためには、廃棄物を産業の原料として活用するシステムを実現しなければなりません。

■植田靖子さん(廃プラを燃やすな!市民協議会)
 1989年以降23区のごみは現在まで減り続けています。そのため、焼却炉の処理能力は余っています。しかし、焼却炉の数は減っていません。逆に、世田谷清掃工場の立替、足立工場、大井工場、葛飾工場のプラント工事などが進められています。そのような中、2005年1月に私達は「廃プラを燃やすな!市民協議会」を発足しました。
 まず必要なことはごみを増やさないことです。廃プラは、容器包装リサイクル法を活用して分別を進めれば、もっと資源化することが可能なのです。2005年10月に特別区長会は、23区の廃プラのサーマルリサイクル(焼却処理)を2008年度から本格実施することを決めました。その理由を行政側は最終処分場の延命目的と説明しています。しかし、東京都の最終処分場に占める一般廃棄物の割合は全体の20%、そのうち廃プラの割合は全体の10%に過ぎません。分別収集によってもっと廃プラを減らせるのに燃やして灰にする必要はありません。私達は区議69人と区民で廃プラ焼却計画の撤回を求める共同声明を出しています。
 また、焼却施設から排出される重金属やダイオキシンなどの有害化学物質の問題があります。環境省はいくつかの研究結果を示して、焼却施設から排出される重金属は除去できるという説明をしています。しかし、私達がそれらの研究を実施した研究機関にアンケートをとったところ、都市ごみには実験では把握できないものが混入するので安全かどうかは調査が必要だとの回答を得ました。つまり完全に安全だとは言えないのです。しかも、東京都は焼却施設からの排ガス・重金属基準値を設定していません。ドイツは排ガス基準がありますし、EUは排ガス中の重金属類(カドミウム・水銀・鉛など12種類とその化合物)の規制値を設定しています。

■坂本史子さん(目黒区議会議員)
 清掃工場の排ガス測定は、カドミウム、鉛、塩化水素、PCBなど25物質について年1回2日間行われています。清掃一部事務組合は、調査結果から全ての基準をクリアしていると説明しています。しかし、年1回しか行われていないため、最も状態のよい時期に測定しているのではないかということが懸念されます。有害物質の除去は、最初バグフィルターで有害物質が除去され、次に洗煙装置を通り、蒸気式ガス再加熱器によって温度を上げた後、触媒分解塔に入るという3工程を経ます。ごみ質の変動は不規則にしかも常時生じています。ごみ質の変動が常時起こっている状況で、その状況に応じて循環空気・排ガス冷却用空気・冷却水・補給水・苛性ソーダ等を調整することは不可能です。
 現在、東京都の4区(品川区・大田区・足立区・杉並区)でサーマルリサイクルの実証実験を行なっています。廃プラ混合ごみの焼却が、排ガス・排水・焼却灰および焼却施設に及ぼす影響等について調査するものです。
 目黒区では、清掃一部事務組合と目黒区及び地域住民代表で、目黒清掃工場の操業に関し、工場建設時における地域環境の状況を悪化させないよう公害発生の防止と改善を務めるための協定書を締結しています。

※さらに詳しく知りたい方は、下記の関連ホームページなどをご覧下さい。
廃プラスチック焼却計画の撤回を求める23区民・区議会議員による共同声明
 http://www.ikejiriseiji.net/kodawari/kyodoseimei.pdf
東京都23区清掃一部事務組合
 http://tokyo23.seisou.or.jp/index.htm

                 (粟谷しのぶ)

 

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