ニュースレター 第44号 (2006年12月発行)
記念フォーラム 第2分科会
「アスベストと建材」

講師:アスベストチーム・常任幹事 井上 雅雄氏

 2005年6月、「クボタ・ショック」を契機として、アスベスト被害の深刻な実情と国の対策の遅れが明らかになりました。2006年1月、被害者救済のための新法が制定されましたが、現在使用中のアスベストに対する対策は不十分なものにとどまっています。
 アスベストの用途の最大は建材で、一般住宅を含めて建物に広く使用されています。アスベストの使用を知らずに破損したりすると、気づかないままアスベストを吸い込んでしまうということになりかねません。
 そこで、国民会議のアスベストチームのメンバーで、シックハウス問題にもお詳しい井上雅雄さんに、私たちの住宅や身の廻りの製品のどんなところにアスベストが使われているかについてお話をしていただきました。

●アスベストとは?
 アスベストは、蛇紋石や角閃石が繊維状に変形した天然の鉱物のことで、蛇紋石系(クリソタイル)と角閃石系(クロシドライトなど)に大別されます。石綿の繊維一本の細さは、だいたい髪の毛の5000分の1程度の細さです。ギリシア語のしない(ない)という意味の「a」と、消化できるという意味の「sbestos」から来ています。生産量の大きかったものは、クリソタイル(白石綿/温石綿)、クロシドライト(リーベック閃石/青石綿)、アモサイト(直閃石/茶石綿)の3種類です。
●アスベストによる健康障害
 アスベスト曝露に関連があるとして確認されている疾病は、石綿肺、肺がん、悪性中皮腫の3疾患です。その特徴は石綿を吸ってから長い年月を経て突然発病することが多いこと、また、潜伏期間には自覚症状がなく、発病すれば有効な治療方法がなく死亡率が高いことにあります。胸部X線写真での発見は難しく、CTスキャンによる検査が必要です。
 今般、石綿工場労働者の家族や工場周辺の住民にも被害が及んでいることが明らかになりました。石綿を取扱う仕事に従事していなくても、多くの製品に使われていたことから知らずにアスベストを吸っていた可能性があります。また、それらの製品の破損・劣化により一般の人々にも曝露の危険性があることは否めません。
●アスベストはどんな製品に使われたか
 アスベストには、q繊維状で紡繊性を有する、w耐熱性に優れている、e曲げや引っ張りに強い、r耐薬品性に優れている、t電気絶縁性を有するといった利点があるうえ、安価で経済性にも優れています。このため、アスベストはさまざまな工業製品に利用されてきました。耐火被覆の吹き付け材をはじめ、紡繊品、ジョイントシート、石綿紙・板、ブレーキライニング等の摩擦材のほか、産業機械・化学設備・船舶・自動車部品、さらには石綿スレートなどの建築材料や、上下水道・防火壁・煙突、ボイラーなど3000種類もの製品に使用されていることが報告されています。
●建材とアスベスト
 アスベスト使用建材には、石綿スレートなどアスベスト成形板、石綿管、石綿パイプ、上下水道・防火壁・煙突、耐熱パッキン類、ボイラーなどがあります。アスベスト成形板には、表qのようなものがあります。
 使用用途としては、カラーベストなどの瓦、窯業系サイディングボード、外装吹き付け材、軒天部分、波型スレート屋根(JRのホーム屋根に多用されている)、波型スレート壁(工場・倉庫の壁)のほか、耐火被覆のための吹き付け材です。
 ハウスメーカーのホームページを見ると、自社製品で使用されたアスベストの使用箇所、種類、使用量、製造時期などが公表されていますので、皆さんもぜひチェックしてみて下さい。それによると、システムトイレの壁パネルのセメント基板、浴室の壁の内装材やパッキン類、台所用壁材、ビニール床タイルなどさまざまな箇所に使用されていることがわかります。
 現在、アスベストチームでは、これらの情報を集めたブックレットを作成しています。来春刊行予定ですので、ぜひご利用下さい。
●タルクとアスベスト
 あまり知られていないのですが、実はタルク系充填材にもアスベストを含有しているものがあるのではないかと思われます。以前、赤ちゃんのベビーパウダーのタルクにアスベストを含有していたものがあったことが問題となりましたが、同じような問題がタルク系充填材にもあるのです。
 タルク系充填材は、モルタル混和材や外装吹き付け塗料、仕上げ塗料など多くの建築材料として建築現場で使用されてきました。これらの充填材は非アスベスト製品とされていましたが、分析手法を変えると、3〜14%程度のアスベスト成分が含有されていると思われます。特に蛇紋岩を使用したものからはクリソタイルが検出されたケースもあります。関東地区の住宅は秩父山系の蛇紋岩の使用が多いので、アスベスト(クリソタイル)の含有が懸念されます。しかし、現在のところ、正確な測定方法がなく、また、これらの業者は中小・零細業者が多いので、なかなか正確な情報が得られにくいのが実情ですが、皆さんの住宅でモルタルが使われている場合には、アスベストが含有されている可能性があると考えて、増改築時などには十分注意することが大切です。
●接着剤とアスベスト対策
 以前は、接着剤にもアスベストが使用されていました。種類ごとの使用量、使用期間を表wに示します。
なお、塗料では1988年まで建築下地用として白石綿が使用されていました。
●アスベストの代替品
 アスベスト代替品としてさかんに使用されているのがグラスウールです。グラスウールは安全といわれていますが、水に弱くカビやすいこと、ホルマリンが出ることなどの問題があります。

<お話をうかがった感想>
 井上さんからの説明で、私たちの身の廻りで、いかに多くのアスベストが今も使用されているのかがわかり、驚きました。製品の破損や劣化、除去工事などで、知らないうちにアスベストを浴びて健康を損なうことになるかもしれません。「静かな時限爆弾」は今も私たちの身の廻りにあるのです。私たち一人ひとりが正しい知識を持つとともに、安全に処理されるよう、国や自治体に働きかけをしていかなければならないことを強く感じました。

             (小池操子、中下裕子)

(表@)

石綿スレート 屋根材
石綿スレートパーライト板 天井や壁の下地材
パルプセメント板 内壁・天井・軒天井
成形セメントケイカル板 内装下地材
フレキシブル板 内装仕上げ材
石綿セメント系サイディング 住宅・工場・倉庫の外壁
住宅屋根葺き用石綿スレート 屋根葺き材
化粧板セメントケイカル板 内装仕上げ材
合板補強石綿セメント板 住宅外装材
石綿スレート系木毛セメント板 外壁・屋根下地・間仕切
スラグ石こうセメント板 軽質・中質・内装・外装
吸音孔あき石綿セメント板 吸音材
押し出し成形セメント板 外壁材
ビニル浴衣イル 床材
石こうボード 天井下地材・壁材・間仕切
岩塩吸音板 天井材

(表A)

種 類 使用量 廃止時期 用 途
酢ビ樹脂系溶剤形 〜25% 1990年ごろより非配合 木レンガ用、Pタイル用
合成ゴム溶剤形 マスティック 〜3.0% 1990年ごろより非配合 ボード施工用
エポキシ樹脂系パテ形 〜4.0% 1995年ごろより非配合 土木・建築用
フローリング施工用エポキシ樹脂系 〜25% 1994年ごろより非配合 フローリング施工用
工業用エポキシ樹脂系 〜2% 1994年ごろより非配合  

 

前のページに戻る