| カネミ油症に日弁連の人権救済勧告
国民会議副代表 神山美智子
2006年4月17日、日弁連(日本弁護士連合会)はカネミ油症事件について、次のような人権救済勧告を出しました。
1 農林水産大臣、厚生労働大臣、内閣総理大臣、衆議院議長、参議院議長宛
@国が主体となって、カネミ油症の認定手続きを確立するとともに、すべてのカネミ油症の被害者を救済すること。
A国が主体となって、カネミ油症の治療方法の研究・開発を進めるとともに、専門的知見のある医師等の養成、受診しやすい専門的医療機関の整備を行い、各医療機関に対してカネミ油症の理解及びその治療方法の周知を図ること。
Bカネミ油症の被害者に対し、医療費、医療関連費(健康の維持・回復のために必要とされる費用を含む)及び生活補償費の支給を行うこと。
Cいわゆる仮払金返還請求の対象となっているカネミ油症の被害者に対し、一律に全額免除する措置を採ること。
2 加害企業のカネミ倉庫に対し、
@カネミ油症の被害者に大して支払う医療費の範囲を拡充するよう努めること。
Aカネミ油症事件に関する訴訟終了後に新しく認定されたカネミ油症の被害者に対し、相当額の賠償措置を講ずること。など
3 PCB製造メーカーのカネカに対しては、和解金等の支払いを受けていない被害者に対し、すでに和解金等の支払いを受けた者と均衡を失しない金額を支払うようなどと要望しました。
カネミ油症は、製造元のカネミ倉庫が、米ぬか油を製造する過程で使用したPCBが油の中に漏れて1万人以上の被害者を出した大型食中毒事件で、1968年に表面化しました。後にPCBだけではなく、ジベンゾフランやコプラナPCBなどのダイオキシン類も含まれていたことが分かりました。
カネミ倉庫、カネカ、国などを被告とした損害賠償訴訟が何件も起こされました。カネミ倉庫には当然勝訴したものの同社には資力がなく、わずかな見舞金と一定範囲の医療費が支払われているだけです。
国に対しても一部勝訴判決が出ましたが、国が最高裁判所に上告し、逆転敗訴のおそれが強くなったため、担当の農水省と協議の上で訴えを取り下げました。勝訴判決が出た時点で一部の原告は国から仮払金を受けていたので、取り下げによりこの返還義務が発生したのです。しかし被害者は油症のため働けず医療もかかるという苦境に立たされていたので、農水省は事実上払えないものとして扱い、取立てはしませんでした。
ところが国は時効寸前の9年後になって、当時の暗黙の了解を無視し、いっせいに返還請求を開始しました。被害発生時には幼児だったため自分が被害者と知らずに成長した人や、知らずに結婚した人などもあり、離婚や自殺など大きな被害を引き起こしました。
カネミ油症は病気のデパートと呼ばれるほど、多様な健康被害をもたらしただけでなく、さらに黒い赤ちゃんといわれるように世代を超えた被害も発生させました。しかもダイオキシンを食べてしまったことによる健康被害に対する治療法などは確立されていません。
森永砒素ミルク事件の被害者には森永全額出資の光協会が一定の補償をし、難病や公害病にはそれなりの給付があります。薬の副作用被害についても補償制度があるのに、カネミの被害者は長い間公的救済も一切受けられないまま放置され、さらに仮払金返還請求という苦しみまで負わされてきたのです。
こうした状態を何とかしたい、してほしいということから、2004年約500名のカネミ油症患者・家族が日弁連に人権救済の申し立てをしたのです。
日弁連は、詳細な調査をして最初に書いた勧告と要望を出しました。
国はこの悲惨な被害を早く救済するため、特別の立法的措置をとるべきだと思います。カネミ油症だけでなく、食品事故の被害者は、加害者が保険に加入していない限り救済を受けることができません。私たちが毎日命と健康を養うために食べざるをえない食品によって被害を受けないよう、そして受けたときは安心して治療を受けられるような制度が必要です。
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