環境法の今・第23回
容リ法改正の概要と課題
東京経済大学現代法学部教授 礒野 弥生
●容リ法改正の経緯
この6月9日に懸案だった容器包装リサイクル法改正法が成立し、15日に公布された。容リ法は、自治体やリサイクル団体の後押しもあって、1995年、個別製品についての初めてのリサイクル法として制定された。制定された法律については、リサイクルシステムを形成するという点では広く支持を得たものの、リサイクル制度として最も重要な拡大生産者責任(以下、EPRとする。)が貫かれていないとして、批判を受けていた。そこで、市民団体は、本法制定後も、容器包装のリサイクルに対して、さまざまな議論あるいは制度要求をしてきた。
本法の制定後、循環型社会形成推進基本法が制定され、その中でリサイクルにおけるEPRが明示された。改正にあたっては、EPRにもとづく制度仕組みの改正がどこまで行われるか、が問われてきたのである。改正作業が本格化する中で、生協などを中心に「容器包装リサイクル法の改正を求める全国ネットワーク」をつくられ、対案を持って政府に働きかけてきた。改正のための審議会部会では市民グループから意見を聴いた。さらにパブリックコメントで市民から多くの意見が提出された。他方、経団連も同法改正については、意見書を提出し、これ以上の費用負担はできないとし、事業者としての自主リサイクルの方向を積極的に提示してきた。
だが、審議会中間取りまとめの段階では、それなりにEPRの充実という方向が出されたものの、後に述べるように、本年3月10日に閣議決定された法案では、当初期待されていたEPRに基づく本格的な改正案ではなく、小さな改正にとどまった。本改正法が成立するにあたっては、発生抑制を含む19項目にわたる付帯決議が付けられたことも、本改正が、次の本格改正への中間改正であることを示している。
●改正案の概要
本改正で中心的課題となってきた事項は次の通りである。
q 現行法の目標が分別・リサイクルの促進にとどまっていたものを、発生抑制の推進制度としての容リ法の構築にきりかえる。
w EPR制度を徹底した制度とする。
e そのために、消費者からの収集・保管の自治体負担から容器・中身業者負担への移行する制度を構築する。
発生抑制と排出抑制 改正前の目的条項では、「分別収集及びこれにより得られた基準適合物の再商品化を促進するための措置を講ずる」という条文が、「排出の抑制並びにその分別収集」と、排出の抑制という文言が挿入された。それに伴い、基本方針(3条2項1号、2号、8号)、国・自治体の責務(5条、6条)、都道府県分別収集促進計画(9条2項)および市町村の分収集計画(8条2項)にも、排出抑制が加えられた。これにより、排出抑制がどのような方策で行われるか、具体的に国・自治体によって政策化されることとなった。
このように、発生抑制ではなく排出抑制になったために、事業者に対する責務については、流通に係わる事業者の責務に限定された。すなわち、「第4章 排出の抑制」を新たに創設し、容器包装利用事業者(小売業等)に対して、主務大臣が容器包装の使用の合理化のために取り組むべき措置に関する「判断の基準となるべき事項」を定め(7条の4)、多量利用者に対して、この基準に従って取り組んだ措置の実施状況を報告させ(7条の6)、取り組みが著しく不十分な場合には勧告・公表・命令をすることができる(7条の7)、という規定を新たに設けた。なお、主務大臣は判断基準を設けるときには、環境大臣と協議しなければならず、環境大臣は必要に応じて判断基準となるべき事項について意見を述べることができる。
その他、有償の容器包装を含むことを明記した。これで、有償であれ無償であれ、多量に容器包装を利用する事業者に対して、容器包装の削減を求めることができることが明らかになった。
排出抑制に関して、新たに、環境大臣が民間人を委嘱する容器包装廃棄物排出抑制推進員制度を創設した。同委員は、排出抑制のための調査と啓発活動を行い、国・自治体の施策への協力する、というものである。審議会の最終取りまとめにおいて、消費者の分別排出および排出抑制についての具体的な取り組みが弱く、意識の向上に行動が伴っていないことを指摘していたが、その対策といってよい。
事業者の費用負担 EPRの徹底のためには、事業者がリサイクルに関する費用を負担することが求められる。これまでの考え方は、再商品化は事業者の負担だが収集保管は自治体の負担というものだった。改正法でも、費用負担についての基本的な考え方を変更しなかった。わずかに変更した部分は、市町村による分別収集の質を高めるインセンティブを与えるために、指定法人が当初想定した資源化費用の額を下回った場合には、再商品化の合理化への寄与の程度(市町村ごとの分別基準適合物の質)を勘案して、想定額と実際にかかった費用の差額の2分の1を当該自治体に交付することである(10条の2)。
再商品化義務を果たさない(費用を支払わない)フリーライダーをいかに絶つかも、事業者の適正な負担の観点から重要である。これについては、罰金を「50万円以下」から「100万円以下」に引き上げることによって対処した。
本制度によるリサイクルの徹底 廃棄物処理・リサイクル行政を担う自治体にとって、容リ法によるリサイクルを採用するか否かは、それぞれの選択に委ねられてきた。同制度によるリサイクルを選択しても、分別された容器包装物を全て引き渡さない場合も多い。とりわけ、ペットボトルについては、自治体が業者に直接売り渡し、その結果大量のペットボトルが国外に輸出されていると、本制度の欠陥が指摘されてきた。この対策として、主務大臣の定める基本方針に、「分別収集された容器包装廃棄物の再商品化のための円滑な引き渡し、その他の適正な処理に関する事項」(3条2項4号)を定めることを新たに加えた。
●改正と今後の課題
発生抑制 確かに、リサイクル万能主義から排出抑制にまで踏み込んだことで、過剰包装の削減という新たな施策を取り込むこととなった。この施策自体は、求められてきたことである。フリーライダー対策、輸出による汚染輸出対策についても一定の目配りがなされた。
この改正では、このような点で一定の成果を上げつつも、EPRを原則とした不要物の発生を最小限にとどめる循環型社会の形成という点からすると、期待が裏切られたといってよい。発生抑制、つまり、生産者(中身製造業者、容器包装製造者)のリユース製品へのインセンティブを与えるには至らなかった。審議会の「中間取りまとめ」では、発生抑制及び再使用の推進を政策の第1に挙げていることを考えると、最終取りまとめと法案の段階で、消極的になってしまったのである。中間取りまとめでは、特定施設内でのデポジット制度や自主協定制度などがあげられてきたが、このような自主的取り組みについても、明文化されずに終わってしまった。
たしかに、過剰な容器包装の利用の削減政策の中には、無料レジ袋の禁止の施策など、発生抑制のつながるものもある。これからの執行にあたっては、この方向で追求できるものを追求し、発生抑制へ繋げていくことが必要である。しかしなお、量的な削減のみ意味する「排出抑制」ならば、必要な容器・包装をリユース製品に変えるような政策にはつながりにくいのである。今後の改正にあたっては、質的な抑制の意味をより明確に示す発生抑制という用語に変更することが重要である。
費用負担 EPR原則による発生抑制の徹底については、「中間取りまとめ」では、自治体が負担してきた収集・保管費用の一部を、自治体費用の透明化などを条件に事業者に負担させることを提言の方向としていた。しかし、2で述べたように、実際にかかった費用と想定費用との差額の2分の1の費用の交付という程度に縮小されたのである。今回改正の限界である。この点も次回の課題となった。次回の改正を促進するためにも、自主的協定等で、デポジット制度や負担割合の変更を行う試みを、事業者、自治体、消費者団体・市民団体のレベルで積極的に進めていくことが求められている。
安全な容器包装 EPRについてのもう一つの重要な側面がある。それは、リユースしやすい容器包装というばかりではなく、原料、添加物についてより安全な容器包装の利用を推進することである。この点については、基本的に改正法の考慮の外にある。次回には、この点についても、議論し、規定を設ける必要がある。
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