日本のアスベスト対策を検証する・第1回
きちんとした吹き付けアスベスト対策の提案
環境監視研究所 中地 重晴
●はじめに
昨年末、政府はアスベスト問題に係る総合対策として、q隙間のない健康被害者の救済、w今後の被害を未然防止するための対応、e国民の有する不安への対応の3本柱を対策とし、年初めに、「石綿による健康被害の救済に関する法律(石綿新法)」と関連法規の改正を「石綿による健康等に係る被害の防止のための関係法律の整備に関する法律」として一括提案し、法制化しました。対策の緊急性という点が重要視されたため、対策の有効性や不十分点について、国会で十分な審議もされず、あまりにも、拙速すぎた感があります。
国土交通省における建築物のアスベスト対策については、 成立した一括法案の中で、建築基準法の一部改正が行われ、政省令の改正内容についてのパブリックコメントがさみだれ的に求められていますが、不十分の感をまぬがれません。国民にとって、アスベストによる生命、環境リスクを軽減していくために、総合的な対策を講じる必要があります。そういった観点から、必要なアスベスト対策を整理して、「アスベストが使用された建物に関する特別措置法」を制定し、新たなアスベスト被害の発生を防止していくべきだと考え、国民会議として、この間、国会議員や政府関係者に意見として提案してきました。
●吹き付けアスベストの現状
アスベスト建材には、飛散しやすい吹き付けアスベストと飛散しにくいアスベスト含有建材があります。吹き付けアスベストは1975年に使用が禁止されましたが、当時、アスベスト含有製品とはアスベストを5%以上含むものと定義され、それ以下の濃度で代替品として開発された吹き付けロックウールに混ぜて使用することは続けられました。低濃度(1%〜5%程度)にアスベストを含んだ吹き付けロックウールの使用は1995年まで続きました。
日本では、2004年10月から、アスベストは建材として製造使用することが禁止されました。また、昨年7月から労働安全衛生法で、事業者に吹き付けアスベストのある建物には飛散防止措置を講ずることを義務付けられました。
昨年のクボタショック以後、日本政府は関係省庁ごとに、自ら所管する建物について吹き付けアスベストの使用実態調査を実施しました。たとえば、文部科学省が公立学校や私立学校、厚生労働省が病院などの福祉施設、国土交通省が公立の集合住宅など国や地方自治体の所有する施設と、民間の1000g以上の大規模な建物についてというように、吹き付けアスベストの調査を命じました。調査の結果は各省庁のホームページで公表されていますが、まとめて1枚の表にしてみました。日本全国で、いかに多くの施設に吹き付けアスベストの存在が確認されたかがわかります。
●民間施設の吹きつけアスベストに注目を
表を見てわかるように、1987年、88年に取り組まれた学校施設の吹き付けアスベスト対策がずさんで、今なお多くの吹き付けアスベストの存在が国公立、私立を問わず確認されています。病院や福祉施設の多くは民間です。面積が1000g以上の大規模な民間の施設に吹き付けアスベストが存在しています。労働安全衛生法の改正で何らかの対策を講じていなければならないはずですが、多くは放置されてきたと考えられます。今後、これらの除去工事が必要となります。新たなアスベストの飛散がないよう慎重に工事すべきだと考えます。
そこで、国民会議では、吹き付けアスベスト対策のために、(1)アスベスト使用の有無の調査の義務付け、(2)吹き付けアスベストの調査・届出の義務化、(3)アスベスト使用の表示、(4)吹き付けアスベストの除去年限の明確化、(5)室内のアスベスト管理濃度基準の設定、(6)アスベスト除去事業者の許可制の導入、(7)民間施設の除去工事への財政支援、(8)建物解体時等のアスベスト飛散・曝露防止対策の強化などを盛り込んだ「アスベストが使用された建物に関する特別措置法」(仮称)の制定を提言する予定です。
| 表 国による吹き付けアスベスト実態調査結果のまとめ |
| 調査した省庁 |
建物の種類 |
調査件数 |
吹き付けアスベストが確認された件数 |
| 国土交通省 |
鉄道駅(会社数) |
201 |
20 |
|
バスターミナル |
2253 |
4 |
|
空港ターミナル |
95 |
2 |
|
政府の建物 |
84,215 |
698 |
|
公共住宅 |
40,200 |
226 |
|
民間建築物 |
256,025 |
11,851 |
| 厚生労働省 |
病院 |
7,809 |
2,275 |
|
社会福祉施設 |
90,229 |
4,597 |
|
公共職業能力開発施設 |
3,160 |
279 |
| 文部科学省 |
公立小、中、高校 |
43,588 |
4,137 |
|
公立大学 |
107 |
30 |
|
公立学校関係施設 |
27,828 |
175 |
|
国立大学 |
148 |
106 |
|
私立学校 |
16,886 |
2,414 |
|
公立社会教育施設 |
27,267 |
937 |
|
公立社会体育施設 |
32,489 |
515 |
|
公立文化施設 |
3,577 |
267 |
|
その他 |
29 |
19 |
●吹き付けアスベスト除去工事は要注意
昨年秋以降、国や地方自治体が補正予算化し、吹き付けアスベストのある建物では、アスベストの除去工事が行われはじめました。今年7月には新潟県佐渡の小学校で、吹き付けアスベスト除去工事で養生シートが破損し、生徒がアスベスト粉塵を吸い込むような事故も起きています。サンドブラストを使用した、かなりずさんな工事が行われたようです。この夏休みを利用して各地で吹き付けアスベストの除去工事が行われており、ずさんな工事が行われないかきちんと監視する必要があります。また、除去工事後のアスベスト廃棄物の処理についても、政府が進める溶融処理が最善とは言えず、今後も引き続き、最適な処理方法の開発が急がれます。 (続く)
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