ニュースレター 第41号 (2006年6月発行)
EUのREACHを横目に
化学物質管理政策をめぐって
日本政府も動きだした

有害化学物質削減ネットワーク 中地 重晴

●はじめに
 皆さんご存知のようにEUではこの秋にも新化学物質政策REACH(化学品の登録、評価、許可制度)が制度化されます。アメリカでもTSCA(有害物質規制法)の改正案が議論されています。国際的に化学物質をどのように管理していくのか、転換点にさしかかっています。2008年までの導入を求めるGHS(化学品の分類及び表示に関する世界調和システム)国連勧告に基づいて、日本でも労働安全衛生法が改正され、今年12月からGHS制度が開始されます。そうした化学物質管理に関連する世界的な動きの中で、化学物質排出把握管理促進法が2007年に、化学物質審査法が2009年に国会決議に基づいて見直しを検討する時期にさしかかってきました。
 そのため、環境省、経済産業省がそれぞれ検討委員会を立ち上げて、5月から9月までの間に、集中的に議論することになりました。小生は有害化学物質削減ネットワーク(Tウォッチ)の代表として両方の委員会に参加しています。市民団体として、国の委員会に参加することについては、抵抗感や批判もあると思いますが、アジェンダ21以降、政策決定時の市民参加が重要視されるようになり、委員としての参加を要請されたようです。時代も変わってきたという感じがします。政策決定に市民参加をというのを掛け声に終わらせないように、実質的な議論に積極的に参加していきたいと考えています。簡単に二つの委員会の内容を紹介します。
●化審法改正を検討する産構審の小委員会
 化学物質の新規使用について、毒性を評価し、使用を許可する化学物質審査法では、年間1万数千件の許可申請があり、現行の審査体制では事務処理能力の限界に近づいています。また、既存化学物質については年間1千トンを超えるものについて、企業が自主的に取組むJapanチャレンジプログラムが行われていますが、数十物質については評価されない可能性があり、いかに化学物質の毒性評価を行っていくのかが課題になっています。日本では、経済産業省、環境省、厚生労働省の3省をあわせても、化学物質管理に従事する職員数は数十名規模で、アメリカやEUの数百から千人規模と比較すると、人的体制が弱いことは明白です。
 世界に先駆けて、制定された化審法ですが、いつの間にか欧米に抜かれ、遅れてしまった日本の化学物質管理政策をどのように立て直すのかを議論するために、経済産業省が、産業構造審議会化学・バイオ部会の中に化学物質政策基本問題小委員会(中西準子座長)を立ち上げました。9月末までに集中して、審議される予定です。市民の代表ということで、国民会議の常任幹事の佐藤泉先生とともに小生が委員に加わっています。
 国はリスクベースの化学物質管理を行いたいという意向ですが、予防原則やアスベストや水俣病のなどの教訓に学び、市民のために必要な化学物質管理のあり方を提案していきたいと思います。
●PRTR制度の見直しを検討する懇談会
 もう一つは環境省の化学物質排出把握管理促進法に関する懇談会(大塚直座長)で、PRTR制度の見直しを検討するものです。PRTR制度が実施されて4年分の集計公表が行われていますが、市民の関心が低く、有効に活用されているとは言いがたい状況です。国内で環境中に排出された有害化学物質の量を正確に把握し、環境保全政策にいかしていけるように、PRTR制度の見直しを市民の立場で、提案していきたいと思います。こちらも関係者のヒアリングを行い、9月初めには提言をまとめる予定です。
 どちらも今後の日本の化学物質管理政策の道筋を決める重要な委員会であり、短期間で集中的に議論する予定ですが、拙速な検討に終わらせないように、市民の声を届けたいと思いますので、ご意見ありましたらご連絡ください。また委員会は公開ですので、多くの会員に傍聴していただき、市民の関心の高いことを示していただけるとありがたいです。

 

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