ニュースレター 第40号 (2006年4月発行)
今ここにあるゴミ問題
  〜横浜市の廃棄物処分場〜

横浜市在住 粟谷しのぶ

一般廃棄物処分場のひとつが焼却停止に
 横浜市は、人口約360万人、各家庭から毎年約430万トン、一人当たり一日約660グラムのゴミが排出されています。市内には一般廃棄物焼却場が6機ありましたが、そのうちの港南工場が今年1月、老朽化のため焼却停止になりました。港南工場は処理能力が著しく低下し、建て替えをするか焼却停止にするか迫られていましたが、ゴミの減量に成功したことにより焼却を停止することができたと市は説明しています。平成17年4月から8月までのゴミ排出量は45万6000トンで、住民たちのゴミの分別、減量、リサイクルの努力によって昨年同期と比べて32.4%も減少しました。また、横浜市は、平成22年度におけるゴミ排出量を13年度に対し30%削減する「横浜G30プラン」を掲げ、市としてゴミ減量とリサイクル促進に取り組んでいます。ゴミ減量活動に加えて、横浜市では市民団体が脱ゴミ焼却の運動も行ってきました。「栄工場のゴミを考える会」は、約10年前から脱ゴミ焼却を訴え、住民訴訟を提起したり市長への政策提言をしたりなどのはたらきかけをしてきました。同会では、横浜市内の子どものぜん息が深刻な状況にあることを指摘し、ぜん息と焼却場との因果関係に関する調査を自分達の手で行っています。

写真上:「栄工場のゴミを考える会」代表の西岡政子さん
写真下:港南工場解体工事の住民説明会

 毎日、白い煙が上がっていた港南工場の煙突からは今はもう煙は見えません。横浜市は、港南工場の焼却設備と煙突を撤去し、その跡に資源物のストックヤードを整備することを決め、その説明会が今年2月から3月に数回かけて近隣住民に行なわれました。市側から市職員と工事を請け負う業者が出席し、工事の概要とスケジュール等を説明しました。2月26日午前に行われた第一回目の説明会には、寒い雨の降る中、約20人の地域住民が参加しました。
 ゴミ焼却場の解体工場は、住民達にとって2つの点で不安を感じさせるものでした。その1つは、工場内に吹付けアスベストが使用されていて、その除去工事が必要であること、もう1つは、焼却設備にはダイオキシン類が付着しているため、解体前に高圧水で洗浄する必要があることです。いずれも危険な物質であるため、もし解体工事の際に空気中に飛散した場合には、近隣住民に多大な被害が及ぶおそれがあります。
 無味無臭の危険物質からどうやって逃れることができるのか。市はきちんとした対策を講じているのか。説明会でもこの点に関して住民からの質問が集中しました。それに対して市や事業者は、「法令や条例に基づいて周辺環境に影響を与えないように安全に工事を行います」という一般的な説明はしましたが、もし万が一事故が起こった場合にどうするかという対策については十分に検討していないようでした。たとえば、住民からの「事故が起こったときに住民への連絡はどうするのか」との質問に対しては、「自治会宛てに連絡します」と回答しただけでした。しかし、自治会連絡は全員に周知させるのに時間がかかり、自治会にあまり関与していない住民も多くいます。自治会に通知するだけで十分か疑問が残ります。市や業者がルールに則って解体を行ったとしても、台風や地震などで万が一事故が起こる可能性は100%否定できません。実際、平成12年には大阪府能勢町の焼却場解体工事で、ダイオキシン類が大量に発生し、解体作業者が曝露する事故が起こっています。
 住民が安心して安全に工事を実施するには、説明会での情報提供のみならず住民が工事の実施計画や実施状況をチェックできることが望ましいでしょう。横浜市でも、平成15年に民間の事業者が産廃焼却場を解体した際には、地元市民団体や自治会と事業者との間で解体に関する工事協定書が締結され、地元が合意した内容で解体が行われました。また、作業現場内にモニターカメラを設置して、住民が解体工事の映像を見られるようにしました。実際この解体作業では現場を覆っていたビニールシートが破損するという事故が起こったのですが、モニターカメラによって住民はその事故の発生を知ることができました。しかし、港南工場の解体工事ではスケジュールや内容は市が決定した後で、住民にはそれが説明されただけでした。港南工場の工事は今年3月中旬頃から始まり、約20カ月かけて行われます。また同じ時期に平成13年から稼動停止していた栄工場の撤去作業も始まります。

産業廃棄物処分場の建設問題
 横浜市では、今、金沢区で横浜金沢シンシアR・Cセンター建設事業という産業廃棄焼却処理場の建設計画が進められています。それに加えて、市内の南本牧には廃棄物最終処分場が新しく建設されることになっています。処分場建設については建設の是非について、すでに環境影響評価準備書の段階に入っています。しかし、住民からは建設反対運動が起こっています。「栄工場のゴミを考える会」代表の西岡政子さんは、「シンシア焼却処理場の立地は、現状でも市内一の小児ぜん息の多発地帯です。工事費が350億を超える南本牧処分場は、既存の処分場残余量が十分あります。市民は両事業に反対しています」と訴えています。
 また、市では昨年12月から、今後5年間の産業廃棄物処理指導計画を決めるために第5次横浜市産業廃棄物処理指導計画検討委員会が開かれました。計画の素案に対して今年1月末からの1カ月間かけてパブリックコメントの募集が行われました。しかし、住民からは意見書が6通(意見合計20)提出されただけでした。検討委員会は4カ月の間に5回開催され、今年度中に検討委員会の報告書が市長に提出されます。これに対して「栄工場のゴミを考える会」の西岡さんは、横浜市長、市資源循環局長、検討委員会委員長に緊急要望書を提出し、「検討委員会が産業廃棄物を公共関与で処理・処分する方向へ誘導することをやめること」「事実上の密室審議をやめて多くの市民の目の届く方法で審議すること」を求めました。
 ゴミ問題は住民の生活に直接関わるものです。横浜市の「新時代行政プラン」でも「市民ニーズの把握と『協働』の推進」がかかげられています。しかし、行政と市民の間にはまだ深い溝があります。行政は、処分場の新たな建設が必要かを含めてゴミ処理のあり方を住民とともに議論し、パブコメをもっと市民が利用しやすくするなどにより、意義ある市民参加と合意形成を実現することが必要です。

 

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