ニュースレター 第39号 (2006年2月発行)
地球を汚染するテフロン化学物質 PFOS/PFOAの問題

化学物質問題市民研究会 安間 武
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/index.html

■米デュポン社 報告義務違反で罰金
 米環境保護局(EPA)は、デュポン社のテフロン製造に用いられるフッ素化合物、パーフルオロオクタン酸(PFOA)の健康リスクに関する報告義務違反で、同社に1,650万ドル(約18億円)の罰金を科すことで、2005年12月14日に和解しました。これはかつてEPAが科した最高額の民事過料です。
 米有害物質管理法TSCA8条の(e)では、人の健康や環境に害を与える重大なリスクがあると結論するに足る合理的な知見については15日以内にEPAに報告しなければならないと定めていますが、デュポン社は、1981年にヴァージニア西部にある同社のテフロン工場で調査を行って、妊娠中の従業員の胎児にこの化合物が移行するという結果を得ていた事実を隠していたのです。さらに、1991年には、PFOAが近隣の2つの町の1万2000人に供給される上水道を汚染していたという事実をEPAに報告していませんでした。
 デュポン社は、同社のウェスト・バージニア州パーカースプリング工場の近くのオハイオ州とウェスト・バージニア州の飲料水をPFOAで汚染したとして訴えられていた集団訴訟を和解したばかりです。
■テフロンや防汚・防水・撥油加工に使用
 PFOSやPFOAなどの過フッ素化合物類は、人々が便利に使用しているこげつき防止のテフロン加工調理器具、汚れのつかない家具や敷物、防水加工のレインコート、撥油加工の紙製食品容器などに使われていますが、1990年代になって世界中でヒトや動物の血液を汚染している有毒で、その一部はPFOAに分解する非常に残留性の高い化学物質であるとして注目されるようになりました。
 PFOS(パーフルオロオクタンスルホン酸)は3M社の防汚及び防水用の“スコッチガード”の成分として数十年間使われてきましたが、残留性、生体蓄積性、及び有毒性の懸念があるとして、EPAと3M社の討議を経て、3M社は2000年にPFOSの製造をやめました。
 その直ぐ後に3M社は関連する過フッ素化合物であるPFOAの製造を中止し、PFOAのライセンスをデュポン社に売却しました。デュポン社は半世紀にわたり“テフロン”の製造にPFOAを使用しています。
■米EPAとNGOの取り組み
 EPAは、PFOSで得た知見により、「PFOAは環境中で非常に残留性があり、環境中及び一般のアメリカ人の血液中に低濃度で見いだされている。研究によれば、PFOAは実験動物に発達障害やその他の有害な影響を引き起こすことがある。PFOAはまた、人間の体内に長い間残留するように見える。これら要素の全てを総合して、現在見出される濃度で、又は今後PFOAが環境中に放出され続けて将来達するであろう濃度で、PFOAが人間の健康と環境にリスクを及ぼすかどうかを早急に調査する必要があると判断した」として、PFOA及び他の同様な化学物質についての検証を2000年に開始しました。
 2005年6月、EPAに意見を進言しているEPA独立科学委員会は、PFOAはヒト発がん性があるらしい(ikely human carcinogen)と報告しました。EPAはこの報告書を検討中であり、またPFOAの曝露経路も調査中です。
 EPAは本年1月25日、PFOA及び分解してPFOAになるフッ素化合物の排出削減と製品中の残留を2010年までに95%削減し、2015年までに曝露源を除去するよう取り組むことをデュポン、3M、アサヒガラス、ダイキンを含む8社に要請しました。これは画期的なことです。
 アメリカの環境団体、エンバイロンメンタル・ワーキング・グループ(EWG)は、2003年4月に『地球を汚染する過フッ素化合物類PFCs』という報告書を発表しましたが、それ以前からこの問題に総力をあげて取り組んでいます。化学物質問題市民研究会もウェブサイトに「地球を汚染するフッ素化合物」というページを設け、主にPFOAに関する情報を発信しています。
■カナダ、ヨーロッパ、及び日本の対応
 カナダは2004年に防汚・防油・防水に使用され、その一部はPFOAに分解すると言われるフッ素テロマー4種類を暫定的に2年間禁止しましたが、現在、関連する他のフッ素化合物も全てを禁止することを検討中です。
 EUでは欧州委員会が2005年12月5日にPFOSの市場売買と使用の制限規制案を発表しました。スウェーデンのKEMIはPOPs条約にPFOSを加えるよう提案しています。
 日本の化審法ではPFOSとPFOAは第二種監視化学物質(既存、新規化学物質、難分解性あり、高蓄積性なし、人への長期毒性の疑いあり)に指定されていますが、規制はありません。PRTR法及びJapanチャレンジプログラムではPFOS、PFOAともにリストに挙げられていません。
 有害で極端に難分解性のPFOSやPFOA等の過フッ素化合物類が環境中に排出され、世界中で環境、野生生物そしてヒトを汚染しているということは恐ろしいことです。日本政府もPFOSやPFOAなど過フッ素化合物類に関し、使用中の製品や廃棄処理時の環境放出も含めて、製造、製品、発生源、最終分解成分、曝露経路などの調査及びリスク評価を行い、必要な措置を早急にとるべきです。

 

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