総会記念フォーラム 第2日目 記念講演会 特別報告
「PCBの人体汚染測定結果を考える」
講師:千葉大学大学院医学研究院 次世代環境学プロジェクト/環境生命医学
深田秀樹助教授
PCBによる人体汚染はまだ過去の話ではないと言われます。では、私達は一体どれくらいPCBに汚染されているのでしょうか? どうすればそのリスクを減らすことができるのでしょうか?
PCBによる人体汚染を測定する調査を、千葉大学大学院医学研究院の次世代環境健康学プロジェクト/環境生命医学(森千里教授)が行ったことは、国民会議のニュースレターでも以前ご紹介しました(Vol.36、p2-3)。今回は、深田秀樹助教授から、その測定結果からわかってきたことや、プロジェクトの新たな取り組みについてお話しいただきました。
●PCBの人体汚染測定からわかってきたこと
千葉大学大学院医学研究院の次世代環境学プロジェクトは、次世代の健やかな発育・発達とQOL(生活の質)向上を目的に、環境化学物質の問題に関する調査研究や情報提供を行っています。具体的には、q環境化学物質に関する情報を提供し、w私達が自分自身の汚染状況を知るシステムを構築し、さらに、eその汚染を回避・削減する方法を情報提供していくという3つを活動の柱に置いています。
PCB人体汚染の調査は、プロジェクトの一環として、日本人のPCB汚染濃度の実態を把握するために行われました。2005年春に実施された第一回目の調査では、20代から60代までの男女合計145名(19名の国会議員含む)の血液中のPCB濃度が測定されました。その集計結果からは、PCBが全員から検出され、一部に暴露量が高い人がいたこと(国会議員は比較的濃度が高かったそうです!)、年齢が上昇するとPCBの濃度も上昇すること、男性と出産未経験の女性の濃度は同程度だったこと、出産経験者は出産未経験者より低かったことなどがわかったそうです。この調査は今後も継続的に行われてデータが蓄積されるとともに、将来的には化学物質の健康診断のシステムが構築される計画です。
●化学物質汚染を減らすためにはどうしたらいいの?
では、そのような汚染状況を把握した上で、どうやって化学物質汚染を回避・削減すればよいのでしょう? 深田助教授からは、まず、薬で体から追い出す方法が紹介されました。次世代環境健康学プロジェクトの研究では、高コレステロール血症の薬は、腸肝循環を遮断する作用があるため、体内の化学物質を減らす効果があることがわかりました。研究では、コレスチミドを6カ月服用したところ、ダイオキシンが平均20%、PCBも平均20%減少したそうです。しかし、このような薬は医師の処方が必要なため、一般には使用することができません。
では、私達は日常でどうすればいいのでしょう?
その答えは、日常生活の改善や暴露経路の把握で暴露を減らすことです。PCBなどの環境化学物質の暴露は、食品経由がほとんどです。暴露をさけるには、汚染の少ない地域産の食品や汚染の少ない種類の食品を選ぶこと、油分の高いものを控えること、同じ食材を食べ続けないことなどによって危険を分散することができます。煮たり、焼いたりなどひと手間加えることでもかなり化学物質を減らすことができます。また、体内から化学物質を排出するためには、葉緑素を摂ることが効果的だとわかっているそうです。世界的に有名な環境健康科学ジャーナルであるEHP(Environmental Health Perspective)には、ラットに葉緑素を与えると、体内に取り込まれるダイオキシンの量が減って、糞から排出されるダイオキシンが増えるという報告が出されました。
●新たな試み
次世代環境健康学プロジェクトは、大学の機関とは別に、2004年7月にNPO法人次世代環境健康学センターを設立し、社会へのはたらきかけのための取り組みを行っています。講演では、最近の活動として2つの取り組みが紹介されました。
そのひとつは、環境健康学トランスレーターの養成・認定です。環境化学物質問題は専門性が高く、一般の人には、リスクも対処法もなかなかわかりません。次世代環境健康学センターは、環境健康学の分野で、一般の人に環境化学物質問題を分かりやすく伝え、研究者との間の橋渡しとなるような人材が必要と考え、今年秋から環境健康学トランスレーターの認定を始めました。トランスレーターになるためには、特定の養成講座を受講した上で、このNPOから認定を受けます。トランスレーターなってからは、企業や学校、地域などで化学物質の健康被害や防止法について情報を提供する役割を果たすことが期待されます。
また、もう一つの取組みは、ケミカルフリータウン構想です。これは、千葉大学の柏の葉キャンパス内にある環境医学診療所に、化学物質低減住宅のモデルタウンをつくるという構想です。診療所に訪れた患者さんにシックハウス症候群の疑いがあるときに、化学物質を大幅に低減した住宅に一時的に入居してもらい、原因究明、療養、自宅の改善を効果的にしていこうというものです。この11月に本格的に始ったばかりですが、今後、柏の葉キャンパス内にケミレスタウンのモデルをつくる計画もあるそうです。
PCB測定による化学物質の健康診断、環境健康学トランスレーター、ケミカルフリータウン構想……環境化学物質の汚染を把握し減らしていくことが、夢物語ではなく、具体的にかたちになってきています。次世代環境学プロジェクトの取組みが今後も注目されます。
さらに詳しく知りたい方は、こちらのウェブサイトをご覧下さい。
次世代環境学プロジェクト
http://www.m.chiba-u.ac.jp/class/ehsp/research/index.html
NPO法人次世代環境健康学センター
http://jisedainpo.hp.infoseek.co.jp/chemifree/index.html
〔広報委員会記〕
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