日本リスク研究学会
「予防原則」セッションに出席して
国民会議常任幹事 大竹 千代子
11月13日、午後2時40分から、第18回日本リスク研究学会の特別セッション「予防原則」が、大阪大学コンベンションセンターで開かれた。(演題は文末に記載のとおり)
この企画は筆者が提案した。その理由は次のようなものである。2005年7月に環境省が「第三次環境基本計画に向けた考え方(計画策定に向けた中間とりまとめ)」(中央環境審議会総合政策部会)を発表し、パブリックコメントが募集された。第二次環境基本計画*は既存の日本の法制度の中では、「予防原則」の精神を最もよく反映している文書であるが、世界の流れを汲んで、この中間取りまとめでは、「予防原則」の精神がより具体的に明記されている。そうした背景を受けて、より広い分野の人に議論してもらうための機会と考え、企画提案した。多分野からのアプローチの企画が高く評価され、本学会の中心的セッションのひとつに位置付けられた。参加者も多く、各報告もいずれも興味深い内容であった。議論も極めて活発に行われ、時間が足りない程であった。本セッションは成功裡のうちに終了したといえよう。各報告の要約を以下のとおり紹介しておく。
1.送電線による電磁波と携帯電話の電磁波のリスクをどのように理解しているか、あるいは予防原則の考え方を支持するかどうか、などに関するアンケート調査の報告である。この結果では、極低周波電磁波のリスク研究結果のHPを見て情報を得た後は、80%の人が予防原則の適用に賛成であった、という結果を示した。
2.EUによる臭素化難燃剤のPBDE3種類のリスクアセスメント結果を踏まえ、予防原則に基づいて直ちに規制を行ったもの、あるいは規制を行わなかったものがあったのは、それぞれ不確実性の種類や大きさを理由としている、とした。
3.予防原則は、どの国でも産業と公害との関連においていずれ必然的に到達する考え方だか、そのスピードはさまざまである。また、リスクが潜んでいるさまざまな分野で普遍的に予防原則が必要となる。例としてナノ技術を取り上げ、そのベネフィットが十分リスクを上回ることが判るまで、使うべきではない、と述べた。
4.「予防原則」をめぐる諸議論につき、法的観点から、q予防原則の発動条件、w発動する場合の措置の内容、e適用の決定手続の3側面に分けて問題を整理した上で、個別論点を考察した。その上で、基本計画には法的強制力がないので、こうした論点を踏まえた早期法制化を提案した。
5.環境倫理の立場から、予防原則とリスクマネージメントは科学的不確実性に対して政策を立てる際の合理的なツールであリ、データ不足と言い切れない本質的な不確実性(科学技術の根源的不確実性)の存在を前提に、政策決定がなされるべきであろう、述べた。
○特別セッション「予防原則」の演題
1.「電磁波リスクの社会的なガバナンスと予防原則」 青柳みどり(国立環境研究所)
2.「EUの化学物質のリスク管理における予防的アプローチの意義〜PBDEを調査事例として〜」神崎 雅也(大阪大・工・環境・エネルギー工学)
3.「予防原則の歴史的必然性と普遍性」大竹千代子(化学物質と予防原則の会)
4.「法的アプローチから見た予防原則の現状と今後の展望」中下裕子(ダイオキシン・環境ホルモン対策国民会議)
5.「科学技術の根源的不確実性と予防原則」鬼頭 秀一(東京大・新領域創成科学)
* 国民会議ブックレットNo.4『公害はなぜ止められなかったか−予防原則の適用を求めて』参照
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