ニュースレター 第37号 (2005年11月発行)
容器包装リサイクル制度見直しに関するパブリックコメント

国民会議常任幹事 河登 一郎

 1997年に施行された「容器包装リサイクル法」(以下「容リ法」)は10年後に見直されることになっていますが、市民団体・関連業界・関係官庁がそれぞれ対応を検討しています。
 市民団体の中では、当会議も参加している「容リ法の改正を求める全国ネットワーク」が全国の団体に呼びかけて「容リ法改正市民案」を発表したことはご存知の方も多いと思います。
 一方関係省庁は、経産省・環境省・農水省はそれぞれ審議会を設立し数回にわたる討議の後、それぞれ「中間とりまとめ」を公表し、8月初めにパブリックコメントを募集しました。
 当会議としては、2000年にいち早く「容リ法改正に関する提言」を発表しましたが、今回も3省の募集に対して意見を提出しました。上記3省の「中間とりまとめ」はそれぞれの内容に若干相違はありますが、紙数の関係もありますので一番明快な(と筆者が評価する)農水省の「中間取りまとめ」に対する意見を一部割愛/要約して報告します。

1.はじめに:
 「食品容器包装のリサイクルに関する懇談会の中間取りまとめ」は、大変印象に残る問題提起でした。特に、見直しの基本視点のご指摘は、拡大生産者責任(以下EPR)の本質を短い文章で的確に表現されており(注1)、なるべく早い機会にこの理念が実現することを願っています。
 (注1)容器包装の製造から利用、さらには廃棄、リサイクルに至るライフサイクル全体にわたる費用のほか、環境汚染などの金銭的評価が困難な費用も含めた、いわゆる「社会的費用」の最小化を目的とすること。その際、容器包装廃棄物の発生抑制に充分配慮すること。

2.役割分担の見直し……EPRの重要性:
 事業者・自治体・消費者の役割分担について、私たちはEPRの原点に立ち戻ることが不可欠と考えます。その趣旨で、以下3者の役割について分析します。
事業者:
@「事業者の役割」が分別収集・選別保管費用の一部を分担する程度では効果は極めて限定されます(注2)。これでは、EPRの本来の目的である容器包装の生産段階から発生抑制・再使用しやすい商品設計をする経済的動機付けが働かず、現状の延長では既に限界に達している軽量化など限られた効果しか期待できません。
 (注2)(農水省中間とりまとめ:「事業者が分別収集・選別保管費用の負担に慎重な態度をとることはやむをえない面もある。」:なお、環境省・経産省とも、事業者は収集保管に関して一定の責任を、と限定している。)
A各段階(生産・流通・消費・自治体)がそれぞれ役割を分担すべきという主張は一見公平に見えますが、実質的には公平さは保証されず、制度の複雑化を含めて社会全体のコスト低減・不公正・恣意・癒着の根絶に結びつきません。また、小規模業者・ただ乗り業者・クリーニング業界などの不公平問題も温存されます。明快なルールを徹底して一義的に生産者が諸コストを負担し、競争を通じて合理的に軽減されたコストを消費者(納税者でなく)が負担するEPRシステムこそが、社会的コストを最小に抑える真に公平な仕組みだと考えます。
Bこれら諸経費を一義的に事業者が負担することは「特定の業界に過度の負担をかける」ことにはなりません。明快なルールを徹底することで、業界での競争条件は平等・公平であり、当該業界にとってむしろ製品の付加価値が向上し、効率的な企業にとっては、ビジネスチャンスは拡大する、と積極的に捉えている企業は多数あります。環境政策は、目先の負担増回避より一段高い視点から見識を持って、環境負荷の低減・社会全体としてのコスト軽減及び長期的な産業活性化を重視すべきです。
自治体:
 わが国では既に市町村によるゴミ回収システムが確立していることは指摘の通りですが、反面コスト分析・公開が不充分で民間業者に比べてコストが相当割高であることも多くの場合事実です。
 中間取りまとめでも経費の透明性が指摘されていますが、指摘だけでは作文に終わる可能性が高く、情報公開の徹底と競争原理の導入が不可欠と考えます。
 事業者が収集以降の費用を負担することで商品設計段階からコスト削減が動機づけられ、収集以下の業務自体も自治体と事業者(委託業者を含む)との競争原理の導入でコスト低減効果が相乗的に働きます。
消費者:
 消費者が3R実現努力をするためにも、3Rに必要な全コストが商品価格に反映されている方が効果的であり、かつ公平です。納税者負担では消費者=排出者の3R努力に対する誘因になりません。
 消費者意識改革のために環境教育・エコ表示・学習や啓発の充実は必要であることはご指摘の通りです。一方、経済合理性に基づく行動がさらに効果的であることを私たちは経験的に知っています。

3.その他の発生抑制・再使用の方策
(1)リターナブル容器の利用促進、(2)デポジット制度
@リターナブル容器がワンウェイ容器に比べて、環境負荷・コスト・資源の有効利用
  いずれの面でも原理的に望ましいことは明らかです。もちろん、輸送距離等によっては必ずしもそうでないケースがあることは事実ですが、例外的なケースを過大視しては政策論が混乱します。現状のようにリターナブルがワンウェイに比べて逆優遇されている制度は環境政策として正しくありません。ワンウェイ容器に環境・資源税を賦課し、リターナブル容器の回収コスト支援やデポジットシステム普及促進に充当することが政策としての正しい方向です。
Aライフスタイルの変化で、仮にEPRを実施してもリターナブルからワンウェイへの転換が避けられまい、というご指摘は正しいと思います。しかし、それはワンウェイ容器が、不当に優遇された低コストでの評価ではなく、環境・資源政策上負担すべき諸経費を負担した上での選択であるべきです。
(2)容器包装廃棄物の収集有料化:
 容器包装廃棄物の収集有料化は、消費者(排出者)段階での発生抑制効果はある程度期待できますが、以下のような重大な欠陥があるので反対です。
 不法投棄が増えます。料金が低額では効果が薄れ、高額に設定すれば不法投棄が増えることは経験的に実証されています。不法投棄防止や不公正防止のための監視には、その徹底のために不可避な監視システムに行政コストの大幅増大をもたらすか、不徹底・不公正の温床になります。
 生産者に製品設計段階から発生抑制および再使用・リサイクルしやすい商品を工夫する経済的動機付けが働きません。この点は収集有料化の重大な欠陥です。

4.再商品化の合理化:
(1)「その他プラスチック」製容器包装廃棄物の再生品化手法の見直し:
@材料リサイクルの見直し:
・環境負荷を低減しつつ社会的コストを下げることは、本法を含む環境関連法の原点ですが、商品の生産・加工・輸送・消費・再使用・廃棄処理・最終処分全ての段階でのトータルとしてライフサイクル全体での評価が重要です(LCA)。
・特に、「その他プラスチック」のリサイクルに関しては、複雑な素材・異物の混入・多様なリサイクル技術などの要素が複雑に絡み、正確な費用の分析及び効果の量的把握に関する科学的手法が確立しているとは云いがたい状況です。
・その結果、局部的な環境負荷だけが比較されることも多く、トータルとしての正確な定量分析不在のまま、感情論が優先する場面すら珍しくありません。これでは科学的な環境対策は期待できません。
・LCAが、前提条件の置き方によって左右される限界をふまえた上で、なるべく客観的なLCAの定量分析が急務です。複数の第3者機関による完全な情報公開のもとでのLCAの定量分析が重要だと考えます。定量化困難な環境負荷に関しては前提条件を明記した上での比較と技術革新による不断の見直しが不可欠です。
・その意味で、材料リサイクル・ケミカルリサイクル・熱回収といった類型による機械的な優劣ではなく、トータルとしての環境負荷・コスト低減・資源対策・環境意識など総合的な判断が重要とのご指摘は正しいと考えます。
A入札制度の見直し:
  現状でもリサイクル費用が異常に高いとしばしば指摘されています。指定法人のあり方を含め、「透明性」を謳っただけでは実効は保証されません。情報公開の徹底と競争を担保する仕組みが重要です。
Bリサイクル手法の拡大:
  リサイクル技術開発のための財政支援は有益だと考えます。ただし、癒着や利権の温床になりやすい分野だけに、企業機密など限られた例外を除く情報公開の徹底と普及までの一定期間に限定するなどの配慮が不可欠です。

5.公平性の確保:
(1)「ただ乗り業者」「小規模事業者」「クリーニング袋」など:
@いずれも公平性に問題があります。小規模業者についても線引き前後での不公平は残りますし、公平を期すための行政コストは膨大になります。
A拡大生産者責任を徹底すれば、この問題は最初から存在せず、最も公平です。

 

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