| 解体期に入る日本の住宅とアスベスト
建築家・国民会議常任幹事 相根 昭典
1.アスベストの9割は建材に
近頃アスベストによる健康被害がマスコミでも取沙汰されていて、筆者にも相談件数が増えてきています。アスベストは有害化学物質ではなく、天然の鉱物資源から作られたものであり、微細な繊維質を有しています。アスベストは耐熱性に優れ、500℃やそれ以上の高温でも安定していて、耐火被覆材として広く使用されてきました。アルカリや酸にも強く、その他の化学物質にも安定した抵抗力を持つと言われています。非常に細かい繊維質で中空管状になっているので、熱伝導率が低く、保温材や保温と防音を兼ねて、一時期多くの住宅やマンション、オフィスなどの吹き付け天井材として使用されてきました。また、人工的に作る無機・有機繊維よりも著しく細いので、耐薬品性や耐熱性を生かして、織物上にした製品が多く作られました。
上記の性能を有し、かつ安価な為建材には有害化学物質と同様に、建築物に大量に使用され日本のアスベスト使用量の90%が建材だと言われています。
2.どこに使われているか
気になる住宅にはどの部位に使用されているのか、図を参照して下さい。(イラスト)
最も注意を要するのは、内部に露出している吹き付けアスベスト含有建材であり(写真1・2)、上階の防音効果が期待できるマンションの天井材として、直接吹き付けるだけの施工が流行のように使用されてきました。悪い下地を隠し仕上感が良いので、ローコストかつ施工コストが低く抑えられるのが普及した理由ですが、固定されていないので経年劣化と共にパラパラと落下したり、浮遊粉塵と共に室内空気中に漂っているので、とても危険な状態にあります。主な吹き付けアスベストとしては、
@吹き付けバーミキュライト(ひる石) 住宅の天井材として、とても使い勝手の良い建材です。
A吹き付けアスベスト 鉄骨やビル建築に多く使用されています。(昭和50年に禁止)
B吹き付けロックウール 吹き付けアスベストの代替品としてしばらく使用されました。
次に注意を要するのは、室内に使用されているアスベスト成形板です。
@石綿スレート セメントとアスベストを主原料にして、混和剤を混ぜて成形したもので、建設現場では「フレキシブルボード」と呼んでいます。塗装やタイルなどの下地として広く普及しています。
A石綿セメントパーライト板 石綿セメント板の軽量化を計ったもので、使用部位はほぼ同様です。
Bケイ酸カルシウム板 セメント石灰質とケイ酸質、アスベストを主原料として抄造成形したものです。軽量で寸法精度が高いので、室内の下地材として、ほとんどの住宅に使用されているといっても過言ではないくらい普及しています。
Cセメント系サイディング・窯業系サイディング セメント質とアスベストを原料として外壁に使用されています。
D屋根用石綿スレート カラーベストやコロニアルと称され、新建材で作られた住宅のほとんどがこの屋根材を使用しています。経年劣化と共に飛散の恐れがあります。
Eビニル床タイル 一般的にPタイルと称され、アスベストを5〜20%ほど含み、炭酸カルシウムなどで成形したものです(写真3)。キッチン、トイレ、洗面室などの水廻りの床に多くみられる30cm角の仕上げ材です。
1975年にアスベストが、重量比で5%以上のものは表示が義務づけられ、1995年には1%に下げられてはいるが、これは製品によっては表示がなくてもゼロではないことを意味し、現在も使用され続けているといえます。現実にはほとんどの住宅にアスベストが含まれた建材が使用されています。解体時には注意が必要となり、国交省でも作業手順が義務付けられています。しかし、一般住宅はこれまで40年間ものあいだ新建材で作り続けられ、これから寿命の短い日本の住宅は解体期に入ります。膨大なアスベスト処理が必要となってくるのです。アスベストや化学物質に詳しい専門家の育成が急務といえます。

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