| アトピー性皮膚疾患の原因とみられるダイオキシン類について
ダイオキシン類研究家 高橋 義輝
アトピー性皮膚疾患(Atopic Dermatitis:以下、ADと略すことがある)が大きな発生をみてから早30年余が経過しようとしているが、これまでADの原因あるいは原因物質はダニや卵ではないかとして対策が講じられてきたが、真の原因が判明していなかったために、対策は手さぐり的で試行錯誤のくり返しであったようにみえる。私は、私が2000年に実施した調査の中からダイオキシン類がADの発病原因ではないかと思わせる状況を確認したので、そのことをご報告して、AD患者の自己防衛策のひとつに役立つことを願う。
1、ADの発症原因としてダイオキシン類が関連するのではないかとする根拠
私が実施したADの原因調査の中で、最終的に依頼分析したところ木綿布団わたからダイオキシン類の検出があったこと。併せて分子生物学分野の近年の研究からダイオキシン類の存在下において免疫機能の変調が惹起することが明らかになってきており、この免疫機能の変調がアレルギー疾患であるADを発症させていると考えられること。
2、ADの原因としてダイオキシン類を推定する根拠の説明
@私ははじめに住居環境等とADの関連に関する調査を実施した。AD診断歴があるもの76名を含む101名の対象者で、年齢は3〜9歳で幼少年者が対象者であった。その結果を統計解析したところ、木綿布団がADの診断歴があることと関連性があるとの結果があり、その他の設問であった住宅構造、部屋掃除、布団干し等のダニやシックハウスに関連するであろう項目では関連性があるとなるものはなかった。
Aはじめのうちはごく天然的な材料である木綿わたのどこがADと関連するのかぜんぜんわからなかったが、調査したところ、木綿布団わたでは加工で化学薬品処理をまったく行われることがないことがわかったので、次に栽培工程を調べたところ、数種の農薬が使用されており、その中に枯葉剤を散布する工程があることがわかった。枯葉剤には、以前は2,4,5-T(2,4,5トリクロロフェノキシ酢酸)と2,4-D(2,4ジクロロフェノキシ酢酸)が使用されていて、これらの農薬の農業分野での使用は、ベトナム戦争で行われた枯葉作戦の終息があった1969年からその残余が一般市場に放出されたときから始まった。その結果のよさと安価さから世界中の農業分野で行なわれることになった。ところが2,4,5-Tには猛毒性である2,3,7,8-ダイオキシンが混濁していて散布地域で流産の問題が頻発したことを契機に、1980年代半ばころには製造使用が中止された。その間10年以上も使用されたのであった。
一方、2,4-Dにもダイオキシン類の混濁はあるのであるがこちらは低毒性であるとの評価の下に現在も製造使用されている。そして綿花栽培では収穫前の綿花繊維が真っ白な姿を樹上に出しているときに、収穫時期を早めるために、また機械による収穫時に茎葉の葉緑素が綿繊維を着色して価値が下がることをないようにするために、枯葉剤を飛行機で空中散布する工程があるので、綿繊維に直接農薬がふりかけられ、難分解性であるダイオキシンが残留する可能性が考えられた。
Bダイオキシン類の存在が生理学的医学的にADと関連しうるのかどうかについては、近年の分子生物学の発達の中でその関連性がより明らかになりつつある。ダイオキシン類の存在下で免疫機能を司る胸腺の縮小がみられることは以前からわかっていたが、それに加えて免疫器官の変調によるインターロイキンなどの生体分泌物にアンバランスがおこって、これが下でアレルギーを発症することが明らかになってきている。
rこのように、ADが木綿布団のわたを介してダイオキシン類と関連している可能性があることが判明してきたので、AD患者が使用するあるいはAD患者の母親が使用する木綿布団わたをサンプルに提供していただいて、実際に分析依頼したところ4つのサンプルすべてからダイオキシン類の検出があった。
tいつ頃からADの多発があったかを文献調査したところ、大学病院が実施した2つの調査報告書があり、そのどちらもADの多発がおこったのは1970年すぎであることを示している。また別の資料では、母乳中や食品中のダイオキシン類濃度の最高ピークがあったのは1973〜1974年であることが示されている。これらの状況は、先にみたダイオキシン類を含有混濁した除草剤農薬の世界的な使用と無関係であるとはいい難い。また、2004年に追加調査として私が実施した乳幼児のAD発症に係る疫学調査では、乳幼児のADの発症は子ども自身に原因がみられるのではなく、母親の側に原因があるのではないかとみうけられる特徴がみられる。
それは3つあり、ひとつは母親の誕生年が1970〜1973年ころであるケース、ひとつは母親にADが見られるケース、ひとつは母親の誕生年、但し調査対象母親の誕生年はいずれも1960年代から1970年代やADの有無に関係なく、また第一子にはADがみられないのに第2子に突然にADがみられるケースであり、父親との子のADには関連がみられない。この母親にみられる特徴の共通点は、ダイオキシン類の汚染の濃度がきわめて高かった1970年代を生きてきて、近年に子を出産していることであり、暴露をうけたケースでの母親の体に蓄積されているダイオキシン類が胎盤や母乳をとおして子を汚染し、ADの発症が起きているのではないかとの推測は否定できない。さらに重症性成人AD患者の20名以上の方に口頭ではあるが使用している布団の種類をお尋ねしたところ、全員の方が木綿布団ですとお答えになられたことをも付記しておきます。日本が世界の中でもとくにADが多いといわれるのは、世界の中でも綿繊維を布団わたに使用するのが日本くらいではないかということとの関連性はないのであろうか、今後更に調査を拡充する必要があると思われる。
3、ダイオキシン類の発生と汚染経路
発生源は、大きく分けて2つあると考えられる。ひとつは廃棄物の焼却や製鋼の熔解工程工程などの燃焼工程であり、ひとつは農薬やかつてのPCB製造におけるベンゼンや塩素を原材料にした化学合成工程である。燃焼行程での発生は周知のとおり施設の改善等により抑制が図られて、一定の成果もあげられている。農薬の合成工程での発生は、日本国内では製造の中止や製造原材料の高品質のものへの変換によって対策が図られているが、外国での製造では、私が依頼分析した1990年代製の木綿布団わたからもダイオキシン類が検出されているし、また近年のアメリカの報告書から2,4-D農薬を散布する従事者の間に白血病患者が多くあるというようなことからみると、現在も低コストを維持するために製造の原材料に不純物を多く含む低級品を使用している可能性がある。そして2,4-D除草剤は、小麦、トウモロコシ、大豆、綿花等の栽培に広範囲に使われているのであり、このような栽培で育成された汚染がある農産物が例えば畜産における飼料などとなったとき、卵の卵黄、チーズ、牛乳など脂質が多いもので食品汚染がおこり、これを摂取したときにこれらに含まれるダイオキシン類が抗体になってADを発症しているのではないかという推定も否定はできないのである。
また魚介類も汚染海域で採られたものは汚染が大きいので注意を要する。依頼分析を実施した布団わたのひとつは1970年の生産であり、30年を経過した時点でもダイオキシン類が残留していて検出があったのであるが、逆算して清算された当時の濃度を推計すると少なくみても100pg-TEQ/gを下らない(ダイオキシン類の半減期を4年と仮定した場合)状況があったと推定されるのであり、近年の食品中の平均値が0.05pg-TEQ/gであり、また河川等の底泥の除去の目安ともいえる環境基準値が150pg-TEQ/gであるから、こちらに近いほどの非常に高濃度の汚染が存在したとみられた。これが汚染経路の大きな部分を占めたと考えられる。
4、アトピー性皮膚疾患の治療対策
以上の調査結果からダイオキシン類がADの原因であるとみる私の見識からは、次のようなAD対策が提起される。
@ダイオキシン類の暴露蓄積を避ける。またできるだけ体外排除すること。
1、ダイオキシン類の追加蓄積を絶対に避けること。
見方によっては食品からの汚染よりもひどいとみられる木綿布団のわたからの汚染を絶対に避けることが最も肝心であると思われる。木綿わたはほこりとなり就寝中も呼吸器、皮膚、消化管をとおして人体汚染がある。木綿わたを使用するときは、無農薬で栽培されたオーガニックコットンを使用するのが無難である。次に同じように、畜産物の飼料で、その栽培に2,4-D等のダイオキシン類の含有の懸念がある農薬が使用された場合のものは避けることが肝心である。外国産トウモロコシや大豆かすが使われているものはダイオキシン類の含有が多いとみられる。卵では、卵自体の蛋白質や脂質が悪いのではなく、また全部の卵が悪いのではなく、汚染された飼料で飼養されたものに限って悪いのであるとみられる。従って、卵を半分だけ食べさすとか、食べる量を徐々に増やすとかいう療法は良くないのであり、汚染がない卵を選んで食べることが必要である。酪農においても古畳わらを飼料として使用した場合には昔のダイオキシンの含有が多かった影響で、牛乳の抗汚染がおこることが考えられADの発症との関連が懸念される。そういうことを知りながら、できるだけ布団や食品の選択をすることが肝心だと思われる。
2、ダイオキシンの体外排泄につとめること
方法は、断食により脂肪を結合している汚染物を積極的に体外排出すること。小松菜やノリなどの葉緑素を多く含む食品をできるだけ摂取することで排泄する方法もあげられる。
A免疫力の向上をはかること
食事で緑黄色野菜をはじめ果物なども含めて様々なものをまんべんなく摂食すること。適度な運動を行うこと。適度な休養をとること、など。
参考文献
・FAO and WHO報告書(1970年版. 1979年版)
・西岡清「アトピーは治る(誤解だらけの環境病)1997年 講談社ブルーバックス
・ 阿南貞雄「アトピー性皮膚炎の症状・診断・治療」 モダンメディシン39-43
・環境省、厚生労働省、農林水産省資料
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