シンポジウム
「どうなる?土壌汚染対策」の報告
来年1月に予定されている土壌汚染対策法の施行を前にして、10月25日に、土壌汚染の実態、土壌汚染対策法の内容と問題点、今後の課題などを考えるシンポジウムを開催しました。
●基調講演:「土壌汚染対策法の意味と課題」大阪市立大学大学院教授 畑明郎
●現地からの報告:さいたま西部・ダイオキシン公害調停を進める会 国民会議常任幹事 山田久美子
●パネルディスカッション
| パネリスト |
環境省水環境部土壌環境課 |
黒川陽一郎 |
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残土・産廃問題ネットワーク・ちば |
藤原 寿和 |
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大阪市立大学大学院教授 |
畑 明郎 |
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国民会議事務局次長・弁護士 |
中村 晶子 |
<基調講演>畑 明郎さん
畑さんから、日本の土壌・地下水汚染問題と対策の歴史、最近の市街地土壌・地下水汚染の事例(大阪市此花区の高層住宅高見フローラルタウン敷地の水銀・砒素・鉛・セレン・カドミウム等による汚染の例、ユニバーサルスタジオジャパン敷地の鉛・砒素・総水銀・セレン・六価クロム等の汚染の例、滋賀県八日市市・近江八幡市周辺の地下水広域汚染の例など)、鉱害と主要な金属精錬所などについて、豊富な写真や図表を示しながらご紹介がありました。
土壌汚染対策法が汚染土壌対策として政令・技術的指針で定める汚染土壌の封じ込めについて、フローラルタウン敷地の現地封じ込め計画の例などを紹介しながら、コンクリートは30〜50年で劣化してしまうこと、遮水シートは10年ももたないこと、アスファルトも10〜20年程度しかもたないこと、粘土は水をとおしにくいとはいっても全くとおさないわけではないことなどから、完全な封じ込めは今の技術では不可能であるとの具体的な説明がありました。
畑さんは、土壌汚染対策法は不充分というより無い方がいい法律だと指摘されました。
<現地からの報告>山田久美子さん
産業廃棄物の都心からの大量流入と、焼却処理場の集中、違法な野焼き、不法投棄で苦しんできた埼玉西部地域、特に通称くぬぎ山では、住民運動、法規制などの動きから焼却炉は減ってきているが、一旦できてしまった産業廃棄物の流れ自体は変わらず、現在も破砕や不法投棄状の放置された巨大なゴミ山に悩まされていること、くぬぎ山再生事業と銘打った施策によってあたかも解決したような感を与えるが、その裏でこのような行為が未だに野放しとなっていること。また、特に深刻なのは、2001年暮れから活発化した残土の流入で、ちょうど土壌汚染対策法案が検討され始めたころと一致するため、成立前後の混乱に乗じて不審な業者が地主に貸与を持ちかけたり、詐欺行為によって地主も知らない間に大量の残土が搬入されるという事件が起きていること、里山の木々を切り払い、深さ14m〜15m、幅20m、奥行き100m〜200mの巨大な穴を掘り、10トントラックで受けてきた残土(汚泥?)によって短期間に埋め尽くし、さらにその上に積めるだけ積んで巨大な山を築いて、業者自身は行方をくらます。このようにしてできた残土の山が現在3個あることなどが、現地の写真を示しながら報告されました。
<パネルディスカッション>
●藤原寿和さん
千葉県は1960年代の高度経済成長期に首都圏から排出される産業廃棄物や建設残土の格好の捨て場とされてきたため、県下の市町村では他県に先駆けて残土壌例を制定して自衛策を講じてきたこと、当初は盛り土の崩落による安全性が問題とされたが、その後有害物質が混入した産廃が残土に混ぜられて捨てられるようになって以降、埋立土砂や残土等の地質汚染防止の面から、県が全国に先駆けて土質規制を目的に残土条例を制定したこと。しかし、条例には@残土処分に立地制限が設けられていない、A市町村の条例には定められていた住民説明会の義務づけがない、B残土の発生元の確認及び搬入される土質の検査体制の不備等から違法処分が見過ごされてきた、などの指摘の後、最近は残土に焼却灰や有害な産廃をアンコにして混ぜて投棄するという悪質な「残土処分」(実際には産廃の不法投棄)が横行し、また過去に投棄された産業廃棄物の埋立場所から河川や地下水に内分泌かく乱化学物質などの有害物質が流出して問題となるケース、環境省が毎年都道府県に依頼して実施している井戸等地下水調査の結果千葉県が全国で一番汚染井戸の検出率が高いなどの実体が紹介されました。
今回の土壌汚染対策法では、こうした過去に埋め立てられた残土や産廃中に含まれていた有害物質の河川や地下水への流出による汚染問題に対しては、効力が及ばないという問題点を抱えていること、六価クロム事件以来20年以上にわたって市街地における土壌汚染防止法は制定されず対策が立ち遅れたこと、国土を格子状のメッシュに切ってその格子点の土壌調査を行って汚染状況を把握するオランダの例、ポジティブ・マップ、ネガティブ・マップを作成し、水源地域等には廃棄物処分場など地下水の汚染をもたらすような施設の立地を制限する制度を設けて汚染の未然防止対策を講じているドイツの例を紹介し、日本もこうした取組を行うよう制度化すべきだと指摘されました。
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土壌汚染防止対策のあり方をめぐって活発な意見交換が
行われたシンポジウム=新井喜代次さん写す。 |
●黒川陽一郎さん
土壌汚染対策法の制定経過、同法の目的、特定有害物質、土壌汚染状況調査、土壌汚染による健康被害の防止措置、指定調査機関、指定支援法人等新法の概要、政令・技術的基準の概要、施行スケジュールなどについて説明されました。
●中村晶子さん
市民の立場から見て、新法は事後対策法にすぎず、しかもごく限られたケースについて不充分な対応をするだけのものであること、畑さんの指摘のように事後対策はどれも不完全である以上、大切なのは未然防止であること、いまとなっては運用を注意深く見守りながら附帯決議を足がかりに改正を働きかけていかなければならないこと、情報を開示して市民参加の道を開くことが大切であることなどの指摘がありました。
質疑:会場からは、黒川さんに対する質問・意見が相次ぎましたが、その一部を紹介します。
Q1.経産省と環境省は法案の閣議決定に際して、鉱山保安法の管理区域を新法の対象外にする旨の合意をしたときいているが、なぜか。
A1.なにもしないというわけではなく、どちらでやるかの問題。経産省がやるというので、そちらにまかせるということになった。
Q2.未然防止の観点が無く、土壌汚染問題の長期的展望も感じられないが?
A2.土壌汚染はいまだ全体像が見えていないので、この法律は個々の問題のケースをつぶしていくという観点で作られている。
Q3.健康被害の防止措置として汚染土壌を浄化させるべきなのに、なぜ覆土でよしとするのか。
A3.浄化が望ましいのはわかっているが、どこまでやらせるのか、費用もかかるのでイヤだと言う者に罰則付きの命令で浄化まで強制するのは難しいのではないかという議論だった。
(文責:広報委員会)
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