ニュースレター 第13号 (2001年10月発行)
7・29シンポジウム「循環型社会とプラスチックごみ」
 

●パネリスト 岡山大学教授・廃棄物学会会長 田中  勝
東京経済大学教授・国民会議常任幹事 磯野弥生
京都大学教授・国民会議発起人 植田和弘
国民会議容リ法改正プロジェクトチーム、弁護士 樋渡俊一
●司会 
国民会議事務局長 中下裕子

 

 「ダイオキシン・環境ホルモン対策国民会議」は7月29日、東京都新宿区の上智大学特別会議室で「循環型社会とプラスチックごみ」と題するシンポジウムを開催しました。このシンポジウムでは一般ごみのプラスチックの間題に絞り,循環型社会とプラスチックとの関係をどう考えるかについて議論しました。
 シンポジウムは、まず「止めよう! ダイオキシン汚染関東ネットワーク」「廃棄物処分場間題全国ネットワーク」の岸浪勇氏がプラスチックごみの現状と問題点について問題提起、そのあと次の3氏をパネリストにしてパネルディスカッション、最後に会場とパネリストとの意見交換を行いました。

分別で減らせるダイオキシン発生量

中下 岸浪さん、プラスチックごみの現状について問題提起をお願いします。
岸浪 「循環型社会形成推進法」で新規の法律が4つ、改正法が2つできました。しかし全国的にはごみが大量に発生し、処分場がなくなってきています。新規処理施設の建設には住民が反対し、全国で多くの反対運動が起こっています。
 その中で、東京都内のごみは平成元年の490万トンがピーク、現在は390万トンと量的には減っています。東京都では分別ごみは基本的には清掃工場(焼却炉)の中に入らないことにはなっていますが、実際には8〜12パーセントの割合でプラスチックごみが混ざっていて、焼却段階でダイオキシンの発生などの問題を引き起こしています。
 1950年以降、日本ではプラスチックの量が増え、現在は1400万トンぐらいを使用しています。プラスチックには成型用重金属や多種多様な添加剤が使われています。プラスチックには熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂がありますが、どちらの特性も添加剤を用いることで引き出されます。添加剤のうち可塑剤として使用されるフタル酸エステルは環境ホルモンと疑われている物質です。現在のプラスチックはほとんどリサイクルされていません。
 プラスチックが焼却されたときにはダイオキシンを始め塩化水素、ホルムアルデヒドなどさまざまな有毒ガスが発生する可能性がある。日本のごみ焼却率は78パーセント(1997年度)で、アメリカ16パーセント、カナダ5パーセント、ドイツ・オランダ各25パーセントと比べて圧倒的に高い。世界的に見ても日本は最大のダイオキシン発生国で、世界のダイオキシン発生量の半分を占めています。
 ダイオキシンの発生量はプラスチックの分別によって大幅に減らせます。埼玉県の久喜市、宮代町、神奈川県の大磯町の例ではプラスチックの分別を開始したあと、ダイオキシン発生量が激減しました。
 焼却炉の建設はお金がかかります。例えば豊島区では1トンのごみ処理に2億3000万円のコストがかかる。また清掃工場で大量の化学物質が使われています。新しい工場ほど多量、かつ多くの種類の薬品が使われています。薬品のコストも高い。ごみの分別が住民の責任であるのは至極当然のことですが、住民だけに責任を押しつけるのはおかしい。

リサイクルは環境負荷、資源、経済が物差し

中下 それではパネルディスカッションに入ります。循環型社会と一般ゴミのプラスチックについて、どのように考えておられるか。短期的な処理の問題と中期的な政策という2つの観点からお願いします。
田中 循環型杜会の姿は天然資源の消費が抑制されることが基本。プラスチックの物質回収でリサイクル率が使われるけれど、それがオールマイティではない。本当の意味の資源保全につながるようにしなければいけない。循環型社会の形成を推進するためには科学的な根拠に基づき、合理的に対策を行わなければなりません。
 プラスチックを分別したら、こうなるはずだというので分別しているのなら、その結果を確認していくべきです。私は環境への負荷、エネルギー・資源の消費、経済的負担の3つの物差しが大切だと考えています。リサイクルや環境負荷の問題だけを考えて経済を無視しているものもあります。資源の保全になっていないリサイクルはやめるべきです。
 リスクの削減についても、ある程度まで下げると、それ以上についてはエネルギーを大量に消費するのみで地球環境を破壊する構造になります。費用負担が最小になる選択をしなければならない。

現場で話し合いが必要なプラスチック問題

植田 自動車とプラスチックほど深く社会に溶け込み、便利で、同時に厄介なものはありません。循環型社会を最初から考慮しないといけなかったのに、これまで使い捨てのルールでやってきたのが間違いでした。私たちは出発点を間違えたのではないでしょうか。その弊害が多々、出ています。
 このことはプラスチックだけではなく、ごみ一般についても言えることです。生産、流通、街づくりなどで、廃棄物処理やリサイクルを考えてこなかったのが根本的な問題です。そこから焼却の問題、かさばる輸送などさまざまな問題が起きています。
 プラスチックの問題について現場から話し合いをすることが大事なのに、有用性から議論が始まっています。家電の中にもパソコンの中にも、プラスチックの使用量が増えています。プラスチックはいろいろなものを含んでいるだけに、リサイクルの場面でも問題となる。状態は劣化するので、永遠のリサイクルはあり得ない。ちゃんと評価しなければいけません。そのためには情報が必要。評価の基準と、どのように評価していくかが重要です。
 ドイツのフライブルグ市と日本の寝屋川市のごみを比較する調査を行いました。寝屋川では容積で45パーセントがプラスチックごみ、フライブルグでは25パーセント程度。違いはどこからくるか。例えばフライブルグの飲み物はガラス容器で売られ、デポジット制。フライブルグではバラで秤(はかり)売りするので、トレーはほとんどゼロ。日本の場合、流通でごみが増えている。みなさん、地元のスーパーにパッケージをなくすように協議をしてほしい。

プラスチック生産・ごみ処理の情報開示を

磯野 廃棄物の問題が今後どうなっていくのかを見ながら、プラスチックの問題を考えていかなければなりません。使い捨てを増大させてはいけないのです。プラスチックの処理のうち今、何ができて今後どういう技術を伸ばしていくのかを考えていくことが必要です。それを議論できる土俵を作っていかなければならない。そのためには生産、処理についての情報開示が必要。技術的な問題があって難しいのですが、それを分かりやすい形で伝えていく役割も大切。NPOや企業と行政をつなぐ部分が必要です。
 評価基準が必要という話が出ましたが、社会的コストを下げるとき、誰がどう責任を負うのか、最小のコストで最大の効果を得るためには、どう責任を負わせるかを考えなければならない。
 一般廃棄物は地方自治体の責任、産業廃棄物は排出者の責任、循環型社会における拡大生産者責任というようになっています。自治体はこれからの社会の中で、廃棄物処理も含めてどのような役割を求められているのかを考えていかなければならない。

循環型社会をどう築くか

中下 植田さん、磯野さんは「現状の社会を前提とするのではなく、循環型社会を前提として考えていかなければならない」、いっぽう田中さんは「現状の中で、ライフ・サイクル・アセスメント(LCA)のような評価をしていかなければならない」と言われました。この点で異なっているようですが。
田中 「将来を見据えて」という点は同じです。自治体の実行担当者からすると、これ以上ないという気持でやっていると思います。今やっていることがザ・ベストであることを分かってもらう努力をもっとしなければならない。「実行可能な」という視点がもっと必要です。
植田 大量の廃棄物が出ることを前提に今は努力をしており、そのための仕組み、施設が整備されている。現状から出発しないといけないけれど、どうやって循環型社会に転換するかという方向性とプロセスをはっきりさせていくことが重要になってきます。循環型社会を実現するために、どのように工夫するか、だれが、どのようにつくっていくのかを具体的に話をしないと、行き詰まってしまう。
磯野 廃棄物処理基本法を作るなどして、どのような形でアプローチしていくのか、だれがどのような形で処理していくのかというプロセスを明らかにする必要があります。また廃棄物に関しては住民参加が欠けていました。

どういうシステムが望ましいか

中下 どういうシステムが望ましいのか、在りようをお聞かせください。例えばリサイクルによってエネルギーや資源を浪費するという例がありましたが、そのような製品を造らせない、生産から上流対策を行うべきではないかと思うのですが。
田中 望ましい状態がどんなものか生産者と消費者と廃棄物処理の専門家が話し合う場が必要。
植田 「どういうシステムか」は「どういう方法で」がないと、意味がない。より上流に拡大生産者責任(EPR)を課すことは望ましいと思います。素材の選択、設計から環境に配慮する技術的可能性はあります。技術情報を持っている上流がやるべきです。また拡大生産者責任を与えると、環境に配慮した製品・技術がつくられる動機付けとなります。
礒野 製品の環境負荷を低減することが大事。それには第3者の監視とチェックが必要です。行政だけがチェックするのではなく、社会のチェックがどれだけ効いてくるか。どこまでが企業秘密で、どこまでが環境情報なのかを判断していかなければならない。企業は今、分かっている段階で、危険情報を出していかなければならない。そして社会が受け入れられるか、受け入れられないかを判断していく。今まで、そういう社会的な合意が全くないまま廃棄物処理が行われてきたことが最大の問題です。

望ましい情報公開のあり方は

中下 情報公開について、どのようにお考えですか。
田中 入っていたら危ないというような形ではなく、それがどういう意味を持つのかをきちんと分かるような形で出さなければならない。
中下 生産者にどのような要求をしますか。
田中 メーカーが資源を使い過ぎないように、しかも安全な製品づくりを目指して製品アセスメントのガイドラインを作っています。プラスチックを分別するとき環境面でどのようなメリットがあるかを考え、実績を評価していくことが重要です。
植田 生産物は生産物としてだけではなく、ライフサイクル・アセスメント(LCA)全体から判断しなければならない。処理せず、リサイクルすれば問題ないような場合は、必ず回収できるような仕組みをつくればよい。評価委員会のようなところが、評価をできるような情報を開示させるシステムがあり、参加型で、技術的な裏付けを担保できるようにしなければなりません。
礒野 物が増えてもよいか、という問題もある。つくらないような仕組みを仕込んだうえで、LCA的な判断を下していく。発生抑制のための仕組みをどのようにつくるかを考えることも重要です。

自治体は、ごみ処理にどう関わるべきか

中下 「自治体ルートに乗せるかどうか仕分けることが重要」というご指摘がありましたが、どのようにお考えですか。
田中 再使用タイプのものは企業が負担しますが、使い捨てのものは自治体の責任となっている。生産者が費用負担をするという方法もあります。
植田 どのような仕組みがいいかは、個別の対応が必要です。傾向としては日本の場合、生産者の自己責任をはっきりさせていくという方向です。
礒野 「容器リサイクル法」では、自治体が集めるのが効率的ということが言われましたが、税金でまかなうかどうかは別問題です。また自治体が効率的であったかどうかもわかりません。プラスチックのサーマルリサイクルという選択肢があり得るかもしれませんが、自治体がやるべきではない。

会場から出された主な質問・意見

中下 会場からご質問をどうぞ。
質問@ プラスチックごみを考える場合、化石資源としての観点が欠けているのではないか。塩ビと分けなければ、リサイクルできません。
植田 循環型社会の問題は廃棄物だけではなく、石油資源の問題としても議論すべきというのは正しく、重要な指摘です。
質問A リサイクル費用がかかるプラスチックには、最初の段階で事業者がコストを負担するべきではないか。そうすれば発生抑制につながる。
植田 基本的には賛成。日本の「容器リサイクル法」は税金を投入しており、事業者の自己責任が希薄で、動機付けになっていません。リサイクル費用を適正に負担させるコンセプトを検討すべきです。
礒野 どのように責任を分配していくかを考えていく時代に入っています。
質間B どうしたらゴミが減るか、「容器リサイクル法」をどう改善できるか。客観的な評価には賛成できるが、実際に誰が「客観的な評価」をしているのか。
田中 評価がなされずに政策が選ばれています。
礒野 LCAを分かりやすく説明する人やNPOが育たなければならない。
植田 環境的な負荷を減らす必要性が認識され、企業も環境負荷を定量的に表示するようになってきました。科学的知見は市民と専門家の交流があって初めて生きたものとなる。この議論はますます発展させていかなければならない。
田中 短期的な視点では、住民・廃棄主体として発生抑制があります。環境と資源と財源に限界がある中で、現在のやり方は現状ではベストです。

「一緒に考えたいプラスチック対策」

礒野 プラスチックをどう使っていくのが私たちの社会でよいのかという議論がこれまであまりされませんでした。プラスチックがこんなに問題になるのはリサイクルと処理が大変だからです。
 量を減らしていくことも大切。発生抑制、効率的にものを使う仕組みをどのようにつくっていけるか。また買わなくてもよいという価値、私たちが自然と共生できる社会をどういう形で目指し、どう実現できるか、発生抑制のためにどこで費用を出せるか、法的な枠組みで規制するかどうか、課徴金のような経済的手法を導入するかなどについて、ぜひ一緒に考えていただきたい。
中下 プラスチックの問題は、具体的な解決策が決まっているというような問題ではないことが分かりました。3人のパネラーの間でも、住民が参加し、在りようを決めていくべきであるという点では一致しています。この作業を継続していかなければいけないことを痛感しました。国民会議では提言作りを行っていくので、皆さんもぜひ参加していただきたい。

 

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